Financial and Social System of Information Security

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わが国の法令外国語訳の取組みとフランスやフィンランドにみる法令・判例の英語訳化

2021-03-20 17:22:33 | モバイル社会の課題

 

 2010年10月9日、筆者はブログ「わが国の法令外国語訳の取組みとドイツの法令・判例の英語訳化」において、ドイツの法令検索サイトで英訳化の動向を具体的に解説した。その最後で、わが国の立法や法令解釈等でなお影響力を持つフランスの法令の英訳化動向につき、別途解説を加える旨予告した。

 今回、ペンネーム星野英二の2005年以降のブログ内容を全面的に改訂するに当たり、その約束を守るものである。ただし、今回は法令のみ取り上げる。

 まず、フランスのオフィシャル法令検索サイトとして有名な”Légifrance”が最近英語訳版の閲覧ができないという事実関係を確認した。

 また、本文で述べるとおり筆者は情報保護監督機関であるCNILが「情報処理、情報ファイル及び自由に関する1978年1月6日法律第78-17号(Loi n° 78-17 du 6 janvier 1978 relative à l'informatique, aux fichiers et aux libertés)

英訳サイトの以下の断り書を読むと、このようなフランス政府の情報公開等の大変換とかかわっているようでもある。

「翻訳の方法論:原則として、フランスの機関の元のフランス語タイトルまたは手順は翻訳しないことが決定された。翻訳が誤解を招く可能性がある場合は、テキストに表示されることとなった。その一例として、フランスの「Commission Nationale de l’Informatique et desLibertes」(CNIL)のタイトルに関し、データ保護機関は英語に翻訳されておらず、そのタイトルはそのように、または本文の頭字語(CNIL)の下に表示されるのである。」

 この文章から敷衍するとOfficialな法律の外国語翻訳における誤解やトラブルを避けようとする国家的方針があるようにも思える。

 この点に関し、本文で述べるとおり、内外の解説サイトを見ても必ずといってよいほどLégifranceの英訳化ができていると書いてある。果たしてフランス政府は国内法令や立法化情報整備が主要国中で最も進んでいる一方で、外国語訳作業が遅れているまたは積極的に避けている本当の理由はなんであろうか。米国等ほとんどの国がこのフランスの政策変更に気づいていないのか。

 機会を見て筆者が従来から意見交換している司法省、CNIL等の幹部に確認したいと考えている。もしかしたら、公的データベースのITサイトの全面更新に伴う移行期間中にあるもので、いずれ英訳版の復活があるのかもしれない。

 今回のブログでは、これと対比する意味で、国内法令の外国語訳化を公的に積極的に進めているフィンランドの例を最後に取り上げる。

 わが国の国際化戦略ともかかわる重要な問題である。

1.主要国のフランス法令の英語版を検索サイトやその手順を検証する

(1)米国の連邦議会図書館

Guide to Law Online (https://www.loc.gov/law/help/guide.php)

Nations of the Worldをクリック、アルファベット順に国名を選択する。

例えば、"GERMANY"を選択してみる。

Legislative(http://www.gesetze-im-internet.de/Teilliste_translations.html)

Gesetze / Verordnungen Alphabetisch Sortiert English translations of laws and regulations listed alphabetically

次に国名"フランス"を選択してみた。https://www.loc.gov/law/help/guide/nations/france.php

上記フランスLégifranceサイトで英訳化法令を調べようとすると限定された分野の法令の英訳化サイトはあるが、一般法の英訳サイトはなかった。

OFFICIAL GAZETTE: Journal Officiel de la République Française:

Legifrance Journal Officiel (1990-

Les Journaux Officiels

PARLIAMENT: Assemblée Nationale and Senat

上記議会サイトも英訳化はされていない。

 京都大学の外国法典等の外国法解説サイトや米国連邦議会図書館等内外の解説サイトでかならず引用される「Légifrance(フランス政府が開設した法令、判例、官報などを公開しているデータベースウェブサイト)」は、必ず英訳版があると記されているが、実際クリックすると以下のエラー画面となる。

 京都大学の外国法典等の外国法解説サイトは以下のとおり説明しているが、実際に行った結果は下記画面のとおりである。

404エラー

ページが存在しないか、利用できません。

私たちは以下によりあなたを招く:

上の検索ボックスを使用して新しい検索を実行するか、またはナビゲーションメニューを使用してサイトのコンテンツを参照してください 。

 ところで、フランスの個別情報保護監督機関であるCNILの場合の法律「情報処理、情報ファイル及び自由に関する1978年1月6日法律第78-17号」の英訳版はいかがであろうか。

CNILが訳した「LOI INFORMATIQUE ET LIBERTES ACT N°78-17 OF 6 JANUARY 1978」(https://www.cnil.fr/sites/default/files/typo/document/Act78-17VA.pdf)サイトがある。

(3)Légifranceでの現行有効な法令検索(フランス語)を行ってみた。

2021.3.19時点で有効な法律条文が表示される。この法令データベースLégifranceはきわめて正確なもので、各条文の改正の経緯,、関連するフランス法における命令(règlement)(注1)であるデクレ(décret)やアレテ(arrêté)等との関連も正確にフォローされている。

(4)米国連邦議会図書館サイトでも引用されている franceに関し膨大な法令検索数を示す国連ILO(Internatuional Labor Organisation)の国別法令検索サイト「NATLEX」でフランス民法典の英語版を検索してみた。

https://www.ilo.org/dyn/natlex/natlex4.detail?p_isn=71588&p_lang=en  しかし、リンクによる閲覧は不可であった。

すなわち、https://www.ilo.org/dyn/natlex/natlex4.detail?p_isn=96725&p_lang=en へリンクしたがエラーになる。

(5) NATLEXで多国語翻訳にきわめて熱心なフィンランドの法令検索を行ったらどうであろうか。

 フィンランドの法令検索サイト(https://finlex.fi/en/laki/kaannokset/)を見よう。最新の法令がフランス語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語、そして世界的にみての皆無に近い日本語訳が1本のみ(注2)であるが行われている。英語訳化はほぼ100%である。

2.フランスの裁判制度一覧図および司法省組織図

http://www.justice.gouv.fr/organisation-de-la-justice-10031/

(1)フランスの裁判制度

URLのみあげる。

http://www.justice.gouv.fr/art_pix/organisation_justice_francaise_grand_v10.jpg

(2)司法省の役割と組織図

http://www.justice.gouv.fr/art_pix/Organigramme_MJ.pdf

司法省の中央行政機関は、アンシャン・レジーム期の宰相に相当する大法官(chancelier)の役所に因み、chancellerie(大法官府)とも呼ばれる。また、司法省の長たる司法大臣は、アンシャン・レジーム期から受け継がれた「国璽尚書(Garde des Sceaux)」という特別な職名を帯び、国璽を管理している.

同省は、事務局、司法サービス総監および5つの局で構成されており、その任務は以下の通りである。

①家族法、国籍、民事法および刑事法などの分野における法案および命令の作成。

②司法機関の財産(人事、設備、庁舎、情報機器など)の管理。

③司法当局の判断に委ねられた人々(非行少年および被虐待児童、ならびに受刑者)の支援。

④司法に関する公共政策(犯罪被害者の支援、刑事政策、組織犯罪の取締り、法および司法に対するアクセスなど)の決定および実施。

(司法省サイトを和訳したWikipediaから抜粋引用、筆者が一部追加)

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(注1)フランスにおける命令(règlement)は、一般的効力を有する一方的行政行為(acte administratif unilatéral)であり、行政立法と訳すことも多い。形式としては①デクレ(décret):命令制定権(pouvoir réglementaire)を行使する大統領または首相による、一般的または個別的効力を有する執行行為、②アレテ(arrêté)は、一般的または個別的効力のある執行的決定(décision exécutoire)であって、1または複数の大臣(大臣アレテまたは共同大臣アレテ)またはその他の行政庁(知事アレテ、市町村アレテなど)が発するものをいう)の2種類がある。

なお、命令の効力は、常に個別行政行為のそれに優先する。命令行為は、発令権限および規範的効力によって階層化できる。また、命令は次の2種類に大別できる。①法律の規定を施行するための命令と、②法律の求めなく独立に発する命令である。(Wikipedia から抜粋)

(注2) 1080/1991 Japanese フィンランド緊急事態措置権限法 - Emergency Powers Act in Japanese (untitled (finlex.fi))のみが日本語訳されている。

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このため、その内容のチェックを含め完全なリンクのチェック、確保に努めてきた。

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 このような経験を踏まえデータの入手日から最短で1~2日以内にアップすることが可能となった。

 なお、海外のメディアを読まれている読者は気がつかれていると思うが、特に米国メディアは大多数が有料読者以外に情報を出さず、それに依存するわが国メデイアの情報の内容の薄さが気になる。

 本ブログは、上記のように公的機関等から直接受信による取材解析・補足作業リンク・翻訳作業ブログの公開(著作権問題もクリアー)が行える「わが国の唯一の海外情報専門ブログ」を目指す。

4.他にない本ブログの特性:すべて直接、登録先機関などからデータを受信し、その解析を踏まえ掲載の採否などを行ってきた。また法令などの引用にあたっては必ずリンクを張るなど精度の高い正確な内容の確保に努めた。

その結果として、閲覧者は海外に勤務したり居住する日本人からも期待されており、一方、これらのブログの内容につき著作権等の観点から注文が付いたことは約15年間の経験から見て皆無であった。この点は今後とも継続させたい。

他方、原データの文法ミス、ミススペリングなどを指摘して感謝されることも多々あった。

5.内外の読者数、閲覧画面数の急増に伴うブログ数の拡大を図りたい。特に寄付いただいた方で希望される方があれば今後公開する筆者のメールアドレス宛にご連絡いただければ個別に対応することも検討中である。

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                                                                     Civilian Watchdog in Japan & Financial and Social System of Information Security 代表                                                                                                                 

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