細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●「隠された記憶」の見えない恐怖。

2006年03月07日 | Weblog
●3月7日(火)13-00 東銀座<シネマート試写室>
M-031 「隠された記憶」Cache (2005) 仏
監督・ミヒャエル・ハネケ 主演・ダニエル・オートゥイユ ★★★★
面白いのは、なかなかストーリーの核というのか、問題点が見えて来ないスリラーだからだろう。
しかもスタティックで漂白されたような、ごく普通の風景がフリーズしたように変化がない。
ある日、家の遠景を撮ったビデオが脅迫めいたイラスト画とともに、ダニエルに届けられた。
彼はテレビの人気ジャーナリストなので、その脅しも有名税のひとつかと軽視していた。
デヴィッド・リンチの「ロスト・ハイウェイ」や、アルトマンの「ザ・プレイヤー」と同様な視点だ。
しかし、どうもこの脅迫は、彼の忘れていた過去に関係しているようだ。
見えない恐怖。覚えのない威嚇。
人間というのは、こちらの視線とは別に、いわれのない他人からの恨みや妬みをかうものだ。
その得体の知れない恐怖がコワい。
そして徹底したペースでスクリーンのフレームを凝視するハネケの映像感覚に魅了された。