細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●「マッチポイント」は陽のあたる場所で。

2006年06月16日 | Weblog
●6月16日(金)13-00 六本木<アスミックエース試写室>
M-074 「マッチポイント」Match Point (2005) BBC-UK 英
監督・ウディ・アレン 主演・ジョナサン・リース・メイヤーズ ★★★★☆
シオドア・ドライサー原作「アメリカの悲劇」は古典小説だが、52年の「陽のあたる場所」の映画化で有名だ。
そのプロットをウディ・アレンは巧妙な犯罪ドラマとして、舞台をロンドンに移して脚色した。
ニューヨークを離れて、ロンドンに製作拠点を移したウディの新作はコメディではない。
元テニスプレイヤーのジョナサンは、上流階級の青年をコーチしたことから、その裕福な家族と親しくなっていく。
しかし、同時にアメリカの女優志願のスカーレット・ヨハンソンとの情事も重ねて、多重関係が複雑に歪んで行く。
自分の将来のために、犯罪を行うのは「陽のあたる場所」や「太陽がいっぱい」と同様の窮地を迎える。
そんな若者の社会からの転落を、ウディはオペラのアリアをバックに、サスペンス豊かに、しかも手慣れたテンポで饒舌に進めて行く。上質の犯罪ものだ。
テニスの「マッチポイント」で、打ったボールがネットの上に当たったとき、向こうのサイドに落ちれば勝ちだが、手前に落ちると試合に負ける。
ボールは手前に落ちたが、人生は皮肉な逆転を用意する。
実に洗練されたウディ・アレン一流の意外なマッチポイントだ。