細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『実録・連合赤軍/あさま山荘への道程』迷走した時代の異端児たち。

2008年03月12日 | Weblog
●3月11日(火)13-00 銀座<TCC試写室>
M-031 『実録・連合赤軍/あさま山荘への道程』(2007)若松プロダクション
監督/若松孝二 主演/坂井真紀 ★★★★
1972年2月に起こった連合赤軍が長野県あさま山荘に立てこもって、警官隊との銃撃戦の末に、逮捕され検挙された事件は過去にもドラマとして映画化された。
しかしこの190分にも及ぶ新作は、完全に連合赤軍が孤立化されていくプロセスを、彼らの主観で描いた画期的な力作だ。
世界が歪んでいた時代の若すぎる異端児として、密かに革命を夢見て活動していた連合赤軍の実態を、ここでは特に温情的に加担するでもなく、ごくありがちな青春群像映画として見せて行く若松孝二監督のメガホンはクールで力強い。
ただ学校制度に反発した大学生たちの青春は、時代に反発するパワーを、思想的な共産化へと一途に迷走する。
山小屋に共同生活する彼らは、自己反省を総括して反動の精神を磨こうとする。
スポーツの合宿にはコーチがいるが、ここでは狂信的なリーダーが、まるでカルト教団のように、俗世を退けて反動精神の凍結を磨く。そして内部反発や脱落は即時処刑される。
恐るべき地獄図だが、これも青春である。
壮絶な崩壊に向けてブレーキの故障した若者たちの姿は、あまりにも哀しい。
どうしても彼らの視線から見た「実録」としての作品を作りたかったという監督の気迫に感銘した。
ベルリン映画祭で二冠に輝いたのも、お見事だ。

●3月15日より、テアトル新宿などで公開。