細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『そして、私たちは愛に帰る』それぞれの悲しみからの帰還。

2008年11月11日 | Weblog
●11月10日(月)13-00 京橋<映画美学校第一試写室>
M-129 『そして、私たちは愛に帰る』The Edge of Heaven (2007) トルコ
監督/ファティ・アキン 主演/ハンナ・シグラ ★★★★☆
別の国に住むそれぞれの人間たちの愛の繋がりを描いた秀作だ。
トルコからの多くの移民たちはドイツで生活しているが、宗教的な偏見から、その人種的な格差は大きい。
晩年を娼婦と暮らす老父を許せない息子。
反政府運動をする娘と離れて暮らす母。
友人を追って家族から離れて行く娘。
ハンブルグとイスタンブール。まったくかけ離れた場所で起こった殺人事件が、実は次第にその関係を明らかにして行く。この秀逸なシナリオは、カンヌの映画祭で最優秀脚本賞を授賞した。
まるで上質なミステリー小説のようなふたつの事件は、残された者たちに、愛の大切さを訴える。
どこか『バベル』にも似た発想だが、こちらの方が意外性と真実味が濃いのだ。
EUへの加入問題を抱えたトルコの監督が、こうして家族の危機を軸に描いたラブストーリーは、国際問題を越えた個人に愛の重要さを訴えて、感動的だ。

●12月下旬、シネスイッチ銀座でロードショウ