細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●キネマ旬報/書評<スター発見!>ジェーン・ジェンキンス著

2009年11月04日 | Weblog

 スター原石を見つけ出す方法
     『スター発見!/ A Star is Found !』
      ジャネット•ハーシェンソン&ジェーン•ジェンキンス著 

「えっ、ジュリア•ロバーツの車がエンコしてオーディションに来れないの?」
「宇宙船に乗れなかったジョージ•クルーニーは難破船に乗ることになったわ」
「ブラッド•ピットが消防士になれなかった訳」
「トム・クルーズやジョン・キューサックは高校を抜け出してオーディションに来たの」
「ダスティン•ホフマンが『ホリデイ』にワンカット顔を出したのは?」
「007のシナリオはトップシークレットで読めないから、ダニエル•クレイグのボンド
役決定もまさにスパイ映画並みに極秘作戦だったわ」
「つまり・・・あなたが見た映画には、必ずそれ以前にビッグトラブルがあったのよ」
 10年ほど前に本誌のインタヴューで知り合って以来、ジェーン•ジェンキンスとは
それ以来のメル友だが、その彼女がアソシエイトのジャネット•ハーシェンソンと一緒に
上梓した著書が翻訳されたのを機会に、久しぶりに来日して再会した。
 <キャスティング•ディレクター>という職種が、その映画の配役を決めるということは、
もうかなり前から知られるようになったが、単に有名スターを選ぶということではなくて、
その映画の制作意図に合致して、他の出演俳優たちとうまく融合バランスがとれるかどうかを
迅速に予測し、尚もバジェットを維持しなくてはならない。という責務は苦労が多い。
 つまりは作品の決定的な価値までを左右しかねない重要な選択眼が要求されるのだ。
 そしてその選択によって、作品そのものの商業性や芸術性までが決定される。
 「キャスティングとはスターを選ぶことだけではなくて、作品組織の栄養バランスとして、
どのような配役がベストな化学反応を生み出すかを、予測して決めることで、まるで探偵稼業
のようでもあり、世界中の食材を選ぶ調理師のようなものかもね・・・」
 この本は、フランシス•F•コッポラの推薦で独立し、ハリウッド映画を30年ほどで
恐らく100本近い作品のキャスティングしてきたふたりによって記された、告白的な
初めての実体験著書として、とてもスリリングで興味深いものがある。
 このふたりの推挙なくして、いまのスーパースターたちは存在しなかった、かも知れない。
つまり『スター誕生』でなく、『スター発見!』なのである。
 監修は彼女の朋友の奈良橋陽子さんだ。