細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『抱擁のかけら』砕け散ったあの激しい恋のパズル。

2009年12月05日 | Weblog
●12月4日(金)13-00 渋谷<ショウゲート試写室>
M-130 『抱擁のかけら』Los Abrazos Rotos (2009) focus スペイン
監督/ペドロ・アルモドバル 主演/ペネロペ・クルス ★★★☆☆☆
女性映画の達人アルモドバルが、今回は男の映画を作った。
誰しも、もうひとつの全く別の人生をやってみたい欲はある。
車の衝突事故で失明した映画監督が、名前を変えて、新たにその事故当時制作していた未完成映画の思い出を追想するという一種のミステリーだ。どこか『悪人と美女』のようでいて、事件の謎が少しずつ明らかになって来るというストーリーは、ハリウッドのフィルム・ノワールのテイストがあって興味深い。
さすがにアルモドバルは、話の持って行き方が巧妙で、ついつい魅せられてしまうが、とくに事件性の謎を解明するのではなく、あくまで事故で失った恋と過去を修復して、新しい人生にトライするという発想は面白い。
モチーフは陰の深い話だが、そこはスペインの色彩と監督の個性で明るくカラフルだ。
従って、ふたりの男を操るペネロペは、ファム・ファタールの資質はあったのだが、ここでは明るい素直な女性に描かれているのが、ちょいと残念だった。
あのチエホフの『黒い瞳』を思い出してしまった。

●2月6日より、TOHOシネマズ六本木ヒルズなどでロードショー