●『渇き』の感染型ヴァンパイアはキムチ・パワーで迫り来る。

●12月７日（月）13-00 六本木＜アスミック・エース試写室＞
M-131 『渇き』Thirst (2009) CJE. focus 韓
監督／パク・チャヌク　主演／ソン・ガンホ　★★★☆
あの『オールド・ボーイ』のパク監督の新作なので、試写の初日に駆けつけた。
とにかく異色の名優ソンがヴァンパイアを演じるというので期待した。
聖職でひとの死を見つめすぎた神父は、ウィルス研究のために自分の生命を献体した。
手術後の仮死状態で大量輸血して生命は戻ったが、血液感染で体質が変わってしまった。なぜか夜行性の吸血鬼となったのだ。この前半はおもしろい。
ところが後半、奇病入院の男の妻に興味を持ってからが人格が急変し、性欲の野獣となり、そのあげくに血液までを求めるのだ。これは西欧のヴァンパイア伝来の奇行と同様なのだが、なぜか空飛ぶ怪力スーパーパワーを得てからは、突然ハリウッド映画のように＜何でもありエンターテイメント＞に堕落してしまう。
この急変には呆気にとられてしまった。
マイク・ニコルスの『ウルフ』のように美学を見せるでもなく、ポランスキーの『吸血鬼』のように可笑しくもない。ただただ迷走の果てに朝日に朽ちるのでは、お疲れさまのヴァンパイアに見えてしまった。

●２月２７日より、渋谷ヒューマントラスト・シネマなどでロードショー