細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●震災の影響で、しばらく試写は見られませんので、

2011年03月15日 | Weblog
●キネマ旬報/『午前十時の名画座』

『さよならをもう一度』Goodbye Again   細越麟太郎

「さよならが嫌なら、本当の恋はできない。誰かに愛されない人生なんて無意味よ」という台詞のように、恋と別れを描
いたラブ・ストーリーの傑作だ。
 50年代の後半に小説「悲しみよこんにちは」で衝撃のデビューをした18歳のフランソワーズ・サガンの原作「ブラ
ームスはお好き?」の61年の映画化。
 時代はフランス映画界のヌーべル・ヴァーグやベトナム反戦の世界的ロック・ブームの台頭で若者文化の転換期。
 フェリーニの『甘い生活』(60)やロジェ・ヴァディムの『危険な関係』(59)に代表されるように、ヨーロッパのブルジ
ョワジーに反発する若者たちの反社会的風潮がテーマに息づいている。
 サガンの視線はそうした怠惰な大人達を嘲笑するような冷たさがあって、この作品でも気まぐれな大人の恋路に一石を
投じて,独特のシニカルさが苦味。
 イングリッド・バーグマン演じるパリの装飾デザイナーは独身の40歳。海外を飛び回っている実業家のイヴ・モンタ
ンとの関係も小康状態だ。偶然に知り合ったアンソニー・パーキンスは25歳の弁護士の卵。彼が洗練された熟女バーグ
マンに惹かれて急接近したために、微妙な恋の三角関係が険悪となる。
 しかしテーマは高齢と婚活の難しさだろう。ラストでバーグマンが言い寄るパーキンスに向かって「アイム、オールド、
アンダースタンド?」と絶叫し、クレンジング・クリームを涙顔に塗りまくるシーンは冷淡な感情が肌寒いようだ。
 彼女は好演した『追想』(56)でアカデミー主演女優賞を受賞して以来の名監督アナトゥール・リトヴァークとコンビを
組んでいるが、モンタンも『恋をしましょう』(60)でマリリン・モンローと共演した直後。パーキンスもあの『サイコ』
(60)の次作という、絶頂期の顔合わせだ。
 タイトルは作品の脚本を書いた『麗しのサブリナ』(53)のサミュエル・A・テイラーが原題を改訂したようだが、大人
の感情の裏側を巧妙に皮肉る。
 音楽は『ローマの休日』(53)や『悲しみよこんにちは』(58)のジョルジュ・オーリックで、テーマになっているブラー
ムスの交響曲3番の旋律を映画向きにアレンジして、ジャズのケニー・クラーク・のメンバーも出演して演奏。歌手のダイ
アン・キャロルが劇中で唄っている。
 特筆すべきは、『情婦マノン』(48)や『恐怖の報酬』(53)の名手アルマン・ティラールのカメラ。当時のパリの情景や
若者の風俗を素晴らしいモノクローム映像で魅了してくれる。

●筆者近況/さて楽しみなメジャー・リーグの球春が再開し、試写のスケジュール両立調整が大変だぞ。