細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『家族の庭』で収穫される人生という後悔の味覚。

2011年09月22日 | Weblog

●9月21日(水)12−30 京橋<テアトル試写室>
M−116『家族の庭』Another Year (2010) Untitled 09 limited UK  film council.
監督/マイク・リー 主演/ジム・ブロードベント <130分> ★★★★
ロンドン郊外に住む高齢夫婦の、ささやかな生活を、1年間の季節に区切って描いた秀作。
もともとマイク監督は「秘密と嘘」や「人生は、時々晴れ」のように、ごく平凡な人々の生き方を描く監督。
この作品でも、高齢者の周辺に起こる些細なできごとを、実にやさしい視点で見つめて行く。
とくに四季を通じて一貫したストーリーはない。
「春」はカウンセラーをしている妻と、その独身の友人のこと。
「夏」は夫の友人が家にやってきて酒を飲んで愚痴る。
「秋」はひとり息子がガールフレンドを家に連れて来た。
「冬」は兄の老妻が亡くなって、孤独な彼のケアをする。
まるで小津安二郎監督の名作を見ているように、そこには普通の人々の生きる風景が何気なく描かれる。
ただ、共通しているのは、アルコールによる倦怠症状と、人生への溜め息だ。
タイトルの意味は、もしあなたが別の人生を、もういちどトライできたら・・・・、という意味。
誰だって、もっとマシな「アナザー・イヤー」が送れた筈なのに。
でも、人生をこの歳になって後悔したって、何の得にもならない。
ウディ・アレンの作品と共通したテーマだが、マイク監督はもっとクールに残酷に見せる。
激しい感情の吐露はないが、静かな心にグサリと残る痛恨の一作だ。

■軽いスイングでフラリと上がったセンターへの飛球がそのままホームラン。
●11月、銀座テアトルシネマでロードショー