細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『灼熱の魂』アラブに生まれた、あまりにも過酷な母の人生。

2011年09月28日 | Weblog

●9月27日(火)12−30 築地<松竹試写室>
M−118『灼熱の魂』Incendies (2008) entertainment one カナダ
監督/ドゥニ・ヴィルヌーヴ 主演/ルブナ・アザバル <131分> ★★★★
カナダの公衆プールで、高齢の女性が失神して急逝した。
双子の遺児に残された遺書には、墓はいらないが、もうひとりの長男を探してくれ、と書いてあった。
娘はひとりで母の故郷だった中東のベイルートに、兄の消息を探しに行くが、そこで恐るべき母の青春を知る。
キリスト教の家に生まれたことで、家族はイスラム系の断圧を受けて、家族は離散。
牢獄で拷問の果てに強姦された末、母の長男である幼児は連れ去られた。
未だに戦乱の耐えない危険な現地を旅して、娘は母の過酷な人生に対峙していく。父親はいったい誰なのだ。
これは、あまりにも悲惨な「女の一生」だが、現実に起こりえた不遇の旅路。中東70年代の悲惨な歴史でもある。
衝撃の原作は戯曲だったが、監督はナイーブな映像で繊細な映画にして、アカデミー賞にもノミネートされた。
複雑な過去を、8つのエピソードで区切ったことで、非常に明快な大河ドラマとして成功している。
とくにレバノンでロケしたという、中東の都市部の崩壊した映像は、それだけで悲劇性を強調していて迫力がある。
意外な結末には、かなり無理はあるが、そもそも母の人生そのものが有り得ないことの連鎖だったのだ。
戦争は、かくも悲惨な裏面も押し流していたというドラマだが、知的な女性ミステリーとしても素晴らしい。

■センターのフェンスを打球が転々とする間に、俊足をいかしてスリーベース。
お正月、日比谷シャンテシネなどで、ロードショー