細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『カム・フライ・アウェイ』のフランク・シナトラ一気95分の夢心地。

2012年07月30日 | Weblog

●7月28日(土)13−00 渋谷<オーチャード・ホール>
A  New Musical  < COME FLY AWAY>  『カム・フライ・アウェイ』frank sinatra enterprise
演出/振付/トワイラ・サープ 出演/ラモーナ・ケリー他 <1場、95分> ★★★☆☆

フランク・シナトラの唄った歌曲を並べたミュージカルということで、ブロードウェイでも評判になった。
そのステージが、ほぼそのままで渋谷で見られるというので、半年前から楽しみにしていた。
「スターダスト」から、「ニューヨーク、ニューヨーク」まで、シナトラのヒットソング27曲が一気にメドレーで踊られる。
唄はもちろん、シナトラの声だが、バックの演奏はビッグバンドの生演奏。
やはり予想したように、ネルソン・リドルなどのアレンジは、ところどころ小節を延ばして編集工夫されている。
4組の男女がそれぞれの恋の展開で唄に合わせて踊るが、振り付けはモダーンなアンサンブル。
映画「踊る大紐育」のようなストーリー構成だが、ステージはひとつのバー・フロア。
おそらく、ブロードウェイでは、バンドがオーケストラ・ボックスなのだろうが、今回はステージの上段だ。
そのせいか、踊りが添えもののようで、さっぱり彼らの関係とストーリーが掴めない。
それは1曲ごとにダンサーが変わり、衣装も変化するからで、目まぐるしい。
パンフレットを読むと、ハリウッド映画の有名なカップルをもじっているらしいが、それが判らずに進行する。
シナトラの大ファンとしては、つい曲の内容と順番でストーリーを勘ぐるのだが、それは無用だった。
ブルーベックの「テイク・ファイブ」は、とくにシナトラとは関係ないが、バンドのジャズ演奏で盛り上げるため。
「マイ・ウェイ」も、歌詞の内容とは関係ない踊りなのが、どうもミュージカルとしてはドラマ性に欠けた。
つまりこれは、唄合わせの着せ替えショウなのだ。
つまり、このシナトラ歌曲ミュージカルとしての、企画の狙いに発想の違いがあって、無理もないだろう。
とにかく、シナトラの唄がこうしてオーチャードホールに流れたという幸福だけで、わたしは嬉しかった。
恐らくは場内の満員の高齢なファンも、みなシナトラの曲を聞き込んでいるようだった。
ま、われらシナトラ・ファンにとっては、至福の時間だった。

■ヒットエンドランのゴロが野手の逆をついて、幸運なヒット。
●8月12日まで、渋谷オーチャードホールで公演中。