細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『映画と恋とウディ・アレン』この呆れた天才の曖昧なホンネ。

2012年09月20日 | Weblog

●9月19日(水)13−00 九段下<角川映画試写室>
M−113『『映画と恋とウディ・アレン』Woody Allen ; A Documentary (2011) B plus productions LLC.
監督/ロバート・B・ウェイド 主演/ウディ・アレン <113分> ★★★☆☆☆
いまどきウディ・アレンを知らないひとはいないだろう。
しかし、これだけ長い映画人生を送っている彼の集大成ドキュメンタリーというのは、初めて見たようだ。
多くの作品の特典映像では、それぞれの作品について彼は語っていたが、人生を語ったのは初めてだろう。
特に秘密主義だったのではないだろうが、シャイなニヒリストであったことは、ここでも明かす。
ギャグ・ライターから、スタンダップ・コメディアンを経て映画監督となったが、自分でやりたくないことは、決してやらない。
という頑固なスタンスで、50年もの長いキャリアを築いた映画人というのは稀だろう。
それなのに、いまだに毎年一作のペースで映画を作り、アイデアはなくならない。
多くの映画祭で受賞しているのに、「わたしは人生の落伍者の気分なのはなぜだろう」と呟く。
とんでもない自信家なのか、潔癖主義者なのか、わがままなのか。ただのホラ吹きなのか。
それが、このドキュメンタリーで明かされる。
多くの有名人が、必ず彼の才能と存在と作品の素晴らしさを賞賛するが、彼自身は別のところにいる。
その不思議な違和感が、この映画の深い魅力だろう。
そして「伝説」というのは、本人とは別のところで生まれるのだ、というミステリアスな皮肉も込められている。
とにかく、現生する天才の生き様を見られる、ごく稀なエンターテイメントであることに、間違いはない。

■フラリと上がった凡フライが、意外に伸びてライトのフェンス。
●11月10日より、TOHOシネマズ シャンテでロードショー