細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『人生の特等席』は野球好きには最高の、マイナー・リーグのベンチ裏。

2012年09月27日 | Weblog

●9月26日(水)13−00 内幸町<ワーナー・ブラザース映画試写室>
M−116『人生の特等席』Trouble with the Curve (2012) warner brothers / malpaso pro.
監督/ロバート・ロレンツ 主演/クリント・イーストウッド <111分> ★★★☆☆☆
ここではクリントは本格主演。彼の長年の助監督が演出した新作。
加齢で白内障気味のクリントは、メジャー・リーグ、アトランタ・ブレーブスの契約スカウト。
そろそろドラフト指名の迫ったオフ・シーズンだが、せっせとマイナーな3Aクラスの野球を見ている。
各球団のお目当てスラッガーは、たしかに長打力があるが、クリントは欠陥を見抜いていた。
メジャー球団のスカウトは、パソコンのサイトのデータで、各新人選手の成績は把握しているが、クリントは頑固なアナログ人間。
実際に目の前で、その選手のプレイを見ないと、実力は評価しないという堅物なのだ。
掛かりつけの医者から、父クリントの体調不調を聞いた弁護士の娘エイミー・アダムスは、心配で野球場に駆けつける。
妻を20年前に亡くしたクリントは、球団からも、あと3ヶ月の契約打ち切りを言われていたラスト・シーズン。
目はよく見えないが、50年もメジャーの野球を見て来たクリントは、ストレートとカーブの音は聞き分ける達人だった。
老父とひとり娘の確執。ジョージア州の質素なフィールドに響くバットの快音。
古い60年代のガタがきたムスタング。レイ・チャールズの唄う「ユー・アー・マイ・サンシャイン」。ボロいモーテルの生活。
焦げたステーキとビール。寂れたカントリー・バー。たむろする野球が人生のオヤジたち。それでもこれが「人生の特等席」なのだ。
まさに錆びたようなアメリカン・ライフ。ひさしぶりのクリントも、健さんよりは元気だ。
「もう人生は替えられない。おれはこれでいいんだ」と呟くクリント。俺もそう思う。
タイトルは「やっかいな変化球」とでも言うのか。不出来な人生の自嘲だろうか。
わたしにとっては、ことし一番の大好き映画である。
歌手のジャスチィン・ティンバーレイクが地味に出演、なかなかいい。

■ライト・オーバーのライナーがファールラインを転々のスリーベース。
●11月23日、新宿ピカデリーほかでロードショー