細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『東京家族』の懐かしさと新しさ。

2012年10月12日 | Weblog

●10月11日(木)12−30 築地<松竹映画本社3F試写室>
M−123『東京家族』A Tokyo Family (2012) 松竹映画、テレビ朝日、衛星劇場
監督/山田洋次 主演/橋爪 功 <146分> ★★★★
あの小津安二郎監督の名作「東京物語」の60年ぶりのリメイク。しかも山田監督の50作目の監督作品。
東北の震災のために、シナリオを変更しての、入念なホームドラマだ。
作品の大筋と主要人物は、ほぼ旧作と同じ設定なので、小津作品をご存知の方には非常に懐かしく、感慨深い。
しかし、昔は戦死した次男の若後家、原 節子の役が重要だったが、その部分に次男役を入れて、妻夫木 聡にキャスティングしたところが新鮮だ。
長男は開業医で二児の父なのに、彼は独身のフリーター。
ちょっとドジで、家族の風あたりも強い。老父とも不仲で口をきかない。これが今回のキー・パーソン。
とくに前半は淡々としたホームドラマのパターンだが、旅行中の家で母親が倒れてからが、俄然、山田監督の本領が発揮されてくる。
橋爪の老父も、前半は淡々として、あの笠 智衆の気分だったが、病院のシーンからは、ガラリと気骨に拳がみなぎる。
老後の独り身生活を心配した長男は、東京での同居を薦めるが、「わしはもう、東京には行かない」と言い切る。
そして不甲斐ない次男のガールフレンドの蒼井 優が葬式に登場してからが、この新作の特色がでた。
「この作品を小津安二郎監督に捧げます」というクレジットが、ラストに出た瞬間、監督の自信のほどが伺えた。
リメイクというのは、とかく外野がゴチャゴチャ余計なことを言うのは通例だ。
それも、世界的な名作のリメイク。ただごとではないリスクだ。
しかし60年も時代が流れて、東京も激変した現在。映画も当然のように変化する。
ま、小津さんは、ご自分の映画を、豆腐のようだ、と謙遜していたが、この豆腐料理もまたいいものだ。

■フルカウントからの軽いスイングのレフトの飛球が、そのままスタンドイン。
●2013年、1月19日より、全国公開。