●10月31日(水)13−00 六本木<シネマートB−1試写室>
M−130『みなさん、さようなら』(2012)スモーク、トライベッカ、日
監督/中村義洋 主演/濱田 岳 <120分> ★★★☆☆
東京郊外にある巨大団地で青春時代を過ごした青年濱田は、その団地が自分の世界。
すべての生活必要品は団地内で揃うから、外部に出る必要はない。
というのは彼の言い草で、要するに自己中な<ひきこもり症候群>である。
かなり極端なストイック心理を、おもしろおかしく描いて行く一種のシチュエーション・コメディだ。
甘やかされた母子家族で兄弟もなく、学校では変人として、イジメの対象になっているが、本人は悲観的ではない。
1981年の団地ブームには、学校のクラスメイトも107人もいたが、時代につれて友人も減っていき、気がつけばひとりきり。
それでも、彼は「団地」に固執する。
これは久保寺健彦の原作で評判になり、「フィッシュ・ストーリー」「アヒルと鴨のコインロッカー」などの異才、中村監督が撮った。
いつも現実を多少のニヒリズムとコミック感覚で描くこのテーマも、いわば現代の縮図だろう。
すべての生活手段が「コンビニエント」に手近にそろい、ネットで何でも買えるし、メル友も出来る。
だから、引きこもりでも、どうにか生活はできる。
でも、いったい、人生の幸福ってのは、何なんだ。。。。という、テーマが冷たく残る。
秀作「東京家族」とは、対局にある作品だが、この寓話も哀しく恐ろしい。
「みなさん、さようなら」は、学期末に教室で生徒が一緒にいう別れのことば。
家族は破綻し、人生の幸せも曖昧で希薄。ひきこもりの美学も、判るような気がして身震いした。
■微動しないで痛くない自分からのデッドボール。
●2013年1月、テアトル新宿などでロードショー