●11月21日(水)13−00 銀座<TCC試写室>
M−138『明日の空の向こうに』Jutro Bedzie Lepiej (2010) kid films ポーランド
監督/ドロタ・ケンジェジャフスカ 主演/オレグ・ルイヴァ <118分> パイオニア/シナジー配給 ★★★☆☆☆
旧ソ連の荒廃しきった小さな街。
駅のベンチの下で寝泊まりして、捨てられたパンを食べて餓えをしのいでいる3人の少年。
まだ6歳のオレグは、無邪気にシケモクを吸っている。
戦後の混乱で家族を失ったホームレスの子供たちは、ヨーロッパ各地にいるが、ここの貧困も地獄だ。
極度の不況で、職も宿もない現実だが、オレグの兄とその悪友3人組の子供たちはすこぶる陽気で元気だ。
その現実から脱出すべく、彼らは夜の闇のなかを国境の先のポーランドへの脱出をこころみる。
決死の国境脱出は成功したが、そこには、もっと厳しい現実が待っていた。
よくスパイ映画などで見る迫真のサスペンスだが、少年たちはドジなので、いたってユーモラス。
演出は先年「木洩れ日の家で」で好評の、ポーランドの女性監督。
さすがに繊細な視線で、少年たちの無垢な表情を追う。
しかし、ほとんど台詞にない映画だけに、この作品の製作、撮影、編集をしたアルトゥル・ラインハルトの力量が光る。
多くの過去の<戦争と子供>を扱った名作のように、この作品でも、少年たちの目が美しい。
「スタンド・バイ・ミー」のような深みはないが、ただ生きようとする彼らの勇気には心が動く。
試写室で隣の席にいた女性は、ほぼ全編涙を流していたが、これは彼女の母性が刺激されたからだろう。
いまだに世界のどこかで、このような極貧に生きて行く子供たちがいる。ユニセフは全面推薦すべき作品だろう。
でも、あくまで、これは反政治映画ではなくて、少年たちの夢を描いた作品、と理解したい。
■渋い当たりのショート後方に堕ちたポテンヒット。
●2013年1月26日より、新宿シネマカリテほかでロードショー