●11月22日(木)13−00 六本木<FOX映画試写室>
M−139『ルビー・スパークス』Ruby Sparks (2012) 20th century fox-searchlight
監督/ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス 主演/脚本/ゾーイ・カザン 提供/ミラクルヴォイス ★★★☆☆
天才は隔世遺伝するものらしい。
あの「エデンの東」や「波止場」の名監督エリア・カザンの孫娘のゾーイがシナリオを書き主演した。
いちどベストセラーを書いた若い作家ポールは、そのプレッシャーで第2作が書けない。
夜な夜な悩みすぎて、幻覚で理想の女性が現れるようになった。
おかしなことに彼女は、タイプライターの文章で、何と創作通りの行動をとる。
そして理想の女性は、作家の彼女として、友人たちも認める仲となったが、やはり感情のもつれが出て来るのだった。
アイデアは、ウディ・アレンの「ボギー、俺も男だ!」に共通しているが、心理的には「アニー・ホール」に近い。
監督は「リトル・ミス・サンシャイン」で評判になったコンビだけに、テンポは上々。
ウェスト・ハリウッドの高台に瀟酒な住まいを持つ作家は、またも理想の女性ルビーの暴走に悩むのだ。
所詮、理想の女性といっても、男性の思うようにはいかない。
イメージの人形だった筈のクリーチャーが自我を持ち、彼の心を翻弄する。これが生きた女性の本来の姿。
そして彼は文章の最終稿で、ルビーと別れることにして、それが、やっとまたベストセラーになる。
現実の悲惨から生まれた、恋の物語には、これから意外にスマートなエンディングが待っていた。
そうそう、むかし、リタ・ヘイワース主演「ヴィーナスの接吻」という傑作があったのを思い出した。あれにそっくりだ。
ノーラ・エフロンや、エレイン・メイのような奔放な女性作家のようなラブストーリーだが、モダーンで案外面白い。
それは現実と、理想の狭間をきっちりと線引きして描いたゾーイのシナリオの聡明さだ。
女性版ウディ・アレンの登場はいいが、映画のラストのように、今後に期待したい。
■狙いすました左中間へのクリーンヒットは見事にツーベース。
●12月15日より、渋谷シネクイントでロードショー