●12月18日(火)13−00 六本木<シネマート試写室B−1>
M−150『マーサ、あるいはマーシー・メイ』Martha Marcy May Marlene (2012) fox searchlight
監督/ショーン・ダーキン 主演/エリザベス・オルセン <102分> 配給/SPO ★★★☆☆☆
久しぶりに鋭利な映像感覚に溢れた新作に遭遇した。
フォックス・サーチライトは、メジャーに配給できない斬新な企画を発表するが、これは「ルビー・スパーク」以上の収穫。
噂のコネチカット州のコミューンは、一種のカルト集団だが、山奥の農園で20人くらいで自活していた。
若いマーサは俗世を嫌って、その集団生活を2年していたが、ある日に脱出。
湖畔に住む姉夫婦の家に逃避して、通常の生活に馴染もうとした。
心では、一般の生活に戻ろうとするものの、洗脳された頭脳のトラウマは、不自然にも元のカルト思想に戻そうとする。
この心と頭脳の葛藤が、非常に鋭利な映像感覚で迷走するのだ。
たった2週間の話だが、過去のトラウマを随所にカットインさせる、この若い29歳の監督の技量はベテランを凌ぐ。
とくに、耳鳴りのような不快な音が、現実の生活の中にも聞こえ出す後半は、コワい。
一切の衝動的なショックシーンもなく、淡々と沈没していくマーサの心の病魔。
とにかく、常軌では収拾のつかない、心の病いを、この映画はまるで北欧の映画のような知的サスペンスで見せる。
オードリーの「噂の二人」や、「失踪」、「激突」のような、得体の知れない恐怖。
エリザベスも、ジェニファー・ローレンスと並んで、実に心の内側を表現できる本格俳優として、楽しみだ。
どうか、日本の若い映像監督も、このレベルの技をマスターしてから、人間の心のシナリオを書いて欲しい。
ラストの、車の後部座席だけの恐怖には、久しぶりにヒッチコックを感じてしまった。
■前進守備のレフトの頭上を抜くクリーンヒットはフェンスを転々。
●2月23日より、シネマート新宿ほかでロードショー