●7月9日(火)10−00 六本木<シネマート第2試写室>
M−081『夏の終り』(2013)スローラーナー/バップ/松竹/日本
監督/熊切和嘉 主演/満島ひかり <114分> 配給/クロックワークス ★★★☆
瀬戸内寂聴の40歳代の原作を、昭和三十年代初期という時代設定で映画化。
妻のいる年上の、自称作家の中年男性と、同時に若い元カレとの三角関係を気怠く描く。
モノトーンの昭和の家屋で、密かに展開する情欲の日々を、いかにも陰湿に、繊細な感性で見つめて行く。
どうもあの小津映画の同じ時代なのだが、こちらはとことん暗ーいのだ。
それは日陰者を自覚した人々の日々なので、あの小津映画の明るく幸福な人種たちとは対照的に陰湿なのは、ま、原作の重みなのだろうか。
それとも監督の、あの昭和への思い入れのせいなのか、それはそれは寡黙でデリケート。
向田邦子の「あ・うん」も同様の三角関係を描いていたが、徹頭徹尾あれは明るかった。
つまりこれが、瀬戸内寂聴の文章から見える、監督のメンタルな昭和的視線なのだろう。
その時代考証に見られる「わが谷は緑なりき」や「カルメン故郷に帰る」の看板が、どうも異質に見えてしまう。
それだけ、あの昭和という時代は、清楚ながらも貧しかった。その映像の静止観が、あまりにも平面的に感じられた。
それは女性の視線から描いた情欲の三角関係の、どこかヨソヨソしい文面に対しての遠慮があったのだろうか。
おそらく大島渚やミゾグチが撮っていたら、もっと鋭利な切り口を見せてくれたろう。と残念に見えた。
瀬戸内寂聴のファンの方なら、その陰の部分も、見分けられるだろうか。
■レフトのライン際に飛んだヒット性の当たりだが失速。
●8月31日より、有楽町スバル座などでロードショー