●7月21日(日)16−30 上野<東京文化会館大ホール>
M−087『サイコ/名作シネマとオーケストラ』Psycho (1960) paramount pictures / plus orchestra / fuji television
監督/アルフレッド・ヒッチコック 音楽/バーナード・ハーマン 指揮/ニール・トムソン 演奏/東京フィルハーモニー交響楽団
★★★★☆
まさに、自分がそこにいることが夢のような不思議な、おそろしく贅沢な体験だった。
「サイコ」は、ヒッチコック監督が来日にて帝国ホテルのパーティで会ってから、半年後の60年9月に、やっと試写で見た。
なぜ、完成記者会見から、半年後の試写になったのかは、今回の新作映画「ヒッチコック」で明かされた。
つまり、ストーリーを基本的に前倒しして編集を抜本的にやり直していたための遅延だったのだ。
だから、音楽もかなり修正されて、バーナード・ハーマンの作曲構成も、大幅に改正されたのだった。
「白い恐怖」のミクロス・ローザ以降、もっともヒッチコック・サスペンスを理解していたハーマンの、これは苦肉の作曲。
音楽大学の教材にもなっている、弦楽器のみの演奏構成は、さすがに異色である。
打楽器も管楽器もないステージには、50人ほどのヴァイオリンやチェロのみ、という異様な布陣だ。
映画は数十回は見ているので、見なくても場面は判るが、こうして生のオーケストラとなると、目は閉じていられない。
しかもデジタル・リマスターの映像は、このビッグスクリーンでも素晴らしくシャープ。
きっと、ヒッチコック自身も、パラマウントのスタジオでのダビングでは、このような戦慄の体験をしていたのだろう。
つまり、映画というのは、こうした音楽と映像の相乗効果が作品の資質を引き上げる。
昨年、フランク・シナトラの「カム・フライ・アウェイ」で、生オーケストラによる再現ステージに感動した。
今回の企画では「カサブランカ」と「雨に唄えば」もフィルムと生演奏の奇跡を再現したが、これは素晴らしい贅沢な至福の企画。
ぜひ、ハーマンも出演した「知りすぎていた男」や、秀作「めまい」「北北西に進路を取れ」なども生オ−ケストラで見てみたい。
場内には、意外に若い、恐らく「サイコ」は初めて見るだろうカップルも多いのが、妙に嬉しかった。
■文句なしの豪快なレフトへのホームラン。
●キョードー東京の企画した東京公演は終了したが、同企画の地方公演は不明。