細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『地獄でなぜ悪い』過激やくざスプラッターで、なぜ悪い。

2013年08月01日 | Weblog

●7月31日(水)13−00 西銀座<東映本社7F試写室>
M−091『地獄でなぜ悪い』Why don't you play in Hell ? (2013) 「地獄/制作委員会』
監督/園 子温 主演/堤 真一 <131分>配給/ティ・ジョイ ★★★☆☆☆
大震災以後をテーマにした「ヒミズ」と「希望の国」の、鬼才、園監督の新作は、かなりの変化球コメディ。
彼が映画青年だった70年代頃の経験談をベースに書いたシナリオを、十数年ぶりに推敲して作った悪夢である。
つき合った少女が、暴力団の関係者だったために、やくざの抗争を実写映画にするハメになった不運な映画マニアの冗談だ。
だからこれは、園監督の実績があるからこそ、こうして成立した奇作なのだ。
映画がすきで、映画作りを夢見ている若者たちには、実に豪快な勇気を恵んでくれる異色暴力映画として、かなりキレまくる。
あのブルース・リーのカンフーと、東映やくざ映画に青春ドップリだった当時のファンには、うれしい共感が滲む。
しかし、そうではないアカデミックな名作や、シリアスな映画マニアには悪臭の漂う愚作に写るだろう。
そこはクウェンティン・タランティーノ監督の、とくに「キル・ビル」へのオマージュの色彩が濃い。
つまりこの作品は、低俗娯楽映画のファンのみに捧げられた、あの時代への青春グラフィティ。
血しぶきが飛び、腕や首のころがるロバート・ロドリゲスのゾンビ映画に、園監督は敬意を表しているようだ。
ま、だから、低俗スプラッターや、仁義なき闘いのお好きな深作マニアには、すこぶる痛快な作品。
実はこの作品こそが、園監督の資質と本音が潜んでいる,と、終始ニヤニヤして、大いに楽しんだ。
巨匠タランティーノが見たら、さぞや苦笑して、絶賛するだろう。

■痛打がセカンドベースに当たって、左中間に転々のツーベース
●9月28日より、新宿バルト9他で、全国ロードショー