細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『そして父になる』という、父親としての適正テスト。

2013年08月05日 | Weblog

●8月2日(金)13−00 六本木<シネマート3F試写室>
M−092『そして父になる』Like Father, Like Son (2013) amuse / fuji television / GAGA
監督/是枝裕和 主演/福山雅治 <121分> 配給/GAGA ★★★★
生まれてから6年も一緒に生活して育てた息子が、実は出産時のミスで、取り違えられていた。
東京で大企業の開発プロジェクトを先導しているサラリーマンの福山は狼狽した。
妻の実家に近い前橋の病院に駆けつけた夫婦は、そのミスを病院側から聞かされて、大きなショックを受ける。
間違えられた先方の夫婦は、その前橋で小さな電機店を営む、リリー・フランキーがオヤジの3人兄弟の家族。
映画は、この突然のトラブルをきっかけに、東京のエリート家族と、地方都市の5人家族の慣習や個性のズレを提示していく。
子供の将来を考えると、もちろん、すぐに取り替えればいいのだが、人間はロボットじゃない。
この不測の事態に、福山は怒るが、どう考えても、これは時間のかかるトラブルだ。
映画は、是枝監督の「歩いても歩いても」や「奇跡」と同様に、家族というものの感情空間のネジレを実に冷静に見つめて行く。
満員の150人を収容する試写室には、まだ独身であろうひとも多いが、みな神妙にドラマの行方に一喜一憂している。
それは、このドラマの行方が、どう見ても勝ち目のない、ドロー試合だと判っていても、目が離せない問題を抱えているからだ。
今年のカンヌ映画祭で、審査員特別賞を受賞したことは、このテーマは世界共通だからだろう。
ほぼ父親サイドの苦悩を描いて行くドラマの中で、両家の母親がじっと抱き合うシーンには涙が出た。
とはいえ、エリート・パパの福山雅治も意外の好演。みな本当は君のように、ダメなオヤジなんだよ。
多くの家族映画の名作のなかで、この作品は、子孫の幸福を真剣に描いた知的な秀作として、記憶に残るだろう。

■堅実なジャストミートで、文句なしのフェンスオーバー
●9月28日より、全国ロードショー