細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『大統領の料理人』トリュフ満載フレンチ・ローストの魅惑。

2013年08月07日 | Weblog

●8月5日(月)13−00 外苑前<GAGA試写室>
M−093『大統領の料理人』Les Saveurs du Palais (2012) armoda films / vendome productions / wild bunch 仏
監督/クリスチャン・ヴァンサン 主演/カトリーヌ・フロ <95分> 配給/ギャガ GAGA ★★★☆☆
意外に、上質美味なフレンチだった。
フランスのミッテラン大統領の時代に、実際に彼の直属の厨房を2年間任された女性シェフの実話である。
片田舎で小さなレストランを営んでいたカトリーヌは、ある日突然、パリのエリゼ宮殿に呼び出された。
国賓や外交官や官邸の首脳のいる宮殿には、常時数十人のベテラン・シェフが常駐していた。
その並みいる優秀コックたちを尻目にして、大統領個人直属の厨房を任された彼女は困惑する。
さて、世界中の要人を相手に、どんな味付けのコース料理を出すべきか。
なにといっても、フレンチは美食国家である。国の名誉の関わる要職なのだ。
しかし、彼女はそのプレッシャーにはめげずに、自己流の田舎料理を作ってもてなした。
これが大統領の狙いでもあり、個人的な好みでもあった。
ある夜、公務の終わったミッテラン氏は、ひとり厨房に忍び込み、カトリーヌと夜食を食べて語った。
なるほど、フレンチというのは、この情のこもった信頼の会話と、ワインがあれば最高の時間なのだ。
このシーンの暖かさは、久しぶりに上質なフランス映画の、あの美味な香りを滲ませた。
政治的な激務のうえに高齢で栄養過多気味な大統領を心配して、カトリーヌは2年で辞職して、極地での仕事を選ぶ。
映画は、この極寒の基地での彼女のシェフぶりと、交互してカットバックで描かれる。
その処理が、どうも作品の流れを混乱させがちだが、ま、実話だというのだから、文句も言えまい。
カトリーヌ・フロの適役名演が、より、この極上フレンチを美味しくしている。トレ・ボン。

■素直なジャストミートで、きれいな左中間ツーベース。
●9月、Bunkamuraル・シネマほかでロードショー