●8月8日(木)10−00 内幸町<ワーナー・ブラザース映画試写室>
M−096『許されざる者』The Unforgiven (2013) warner brothers / Nikkatu / Office Sirous
監督/李 相日 主演/渡辺 謙 <139分>配給/ワーナー・ブラザース映画 ★★★★
ご存知、クリント・イーストウッド監督・主演、1992年のアカデミー作品賞受賞の同名作品の完全日本映画リメイク。
かなり不利なリスクを背負っての再映画化だが、中々に充実した力量のある秀作だ。
アメリカの西部開拓時代を、ここでは明治時代の初期の北海道に舞台をアレンジ。
幕府の討伐隊が、落ち武者の敗残サムライたちの撲滅のために、未開拓の北海道奥地にも武力制裁をしていた。
それに便乗してか、とくにアイヌ先住民への虐待や、女郎宿への横暴な取り締まりなど、その暴挙は無法な男たちによって横行していた。
子供たちを養う金にも困った農夫の渡辺謙は、旧友の柄本明の誘いで、逃亡犯の懸賞金目当てにマンハントに出かける。
ストーリー展開は、ほぼオリジナルと同様のペースだが、次第に、開拓の警察権力の横暴な圧政に反発を感じて行く。
悪役の佐藤浩市が、いかにも横暴で傍若無人な振る舞いで、ドラマを引き締めて行く。
われわれはオリジナルのペースを認知しているので、展開に無理は感じないが、そこは名作「悪人」の監督。手抜きはしない。
重厚な時代考察と、広大なロケーション効果も、大スクリーンに堂々とした風格を見せつける。
とくに、ごく善良だった農夫の渡辺謙が、次第に怒りをあらわにして、同友の柄本の殺害を知ってからの怒りは凄まじい。
懐かしい東映任侠映画での、ラストの討ち入りに似ていなくもないが、そこはストレートなクライマックスとして爆発。
素晴らしいのは、その炎上する修羅場を見向きもしないで歩くフルショットと音響と、音楽の洗練さだ。
この作品を見たクリント・イーストウッドは「まさに新しい日本映画の登場」と絶賛したという。
たしかに、ここ最近に見た日本の時代劇映画として、堂々の風格と度量を見せつけた入魂の一作に違いはない。あっぱれだ。
■期待通りのフルスイングで、バックスクリーン直撃弾。
●9月13日より、新宿ピカデリーほかで全国ロードショー