●11月12日(火)13-00 京橋<テアトル試写室>
M-142『ブランカニエベス』Blancaniebes (2012) arcadia motion pictures SL, Nix films AIE スペイン
監督・パブロ・ベルへル 主演・マカレナ・ガルシア <104分> 配給・エスパース・サロウ ★★★☆☆
何と、あのグリム童話の「白雪姫」を、女性闘牛士にしてしまったという奇想天外なシナリオも、この監督の発想だという。
しかも、モノクロームにしてサイレント映画。音楽と現実音はフォローしているが、言葉は字幕映像という、徹底したクラシック趣味。
あの「アーチスト」の登場より先だったら、おそらくアカデミー賞の強力なライバルになったろうが、ちょっとタイミングが惜しまれた。
それでも本国スペインでは、ゴヤ賞を最多11部門で制覇したというから、ま、スペイン自慢の異色作品だ。
1920年代のこと。人気闘牛士は闘技中に重傷を負い、同時期に妻は女子出産の疲労で死亡したので、生まれた娘は意地悪な後妻に育てられた。
ストーリーは「スノーホワイト」そのままなので、あとは森の小人たちとの出会いだが、これが旅の芸人たちで、7人の小人というのは、闘牛の前座コメディアン。
このアイデアがいいので、その後の白雪姫の運命もスンナリと予測がつく。白雪姫はスペイン語で「ブランカニエベス」だ。
後妻の虐待にもめげずに成長したブランカニエベスは、小人たちの愛情で強靭に育ち、彼らのように闘牛術もしだいに身につけて行くのは、父親の血筋だ。
やがて女性マタドールとして、セルビア地方の人気者になった彼女は、首都の大闘牛場でも人気者となっていく。
さすがに本場の闘牛シーンな撮影は、久しぶりに迫力あるアングルだ。とくにモノクロームだから、血の色がないのが詩的だ。
そしてサーカス芸人たちのスケッチや小人たちの描写が、フェリーニ映画のようなグロテスクなユーモアが満ちていて嬉しい。
しかし後妻の嫉妬と悪意の策略で、とうとうブランカニエベスは、クライマックスで例の毒リンゴを口にしてしまう。
このCGやら、エフェクトが進歩した時代に逆行するように、ノスタルジックな趣味に彩られた異色作だが、じつはかなり高度の合成処理にも苦心している。
ラストはディズニー趣味のハッピーエンドは避けて、なかなかシャレた解釈で処理しているのも、さすがに洗練された完成度。
映画テクニックの進化を、逆手を使ってサイレント映画にしたアイデアは面白いし、純真な勇気は評価されて当然だろう。
■レフト狙いの打法で、軽くライト方向に流し撃ちのヒット。
●12月7日より、新宿武蔵野館などでロードショー