細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『MUD・マッド』は狂気ではなく「泥」のような本格人間ドラマ。

2013年11月17日 | Weblog

11月14日(木)13-00 京橋<テアトル試写室>

M-144『MUDーマッド』MUD(2012) neckbone production LLC。

監督・ジェフ・ニコルス 主演・マシュー・マコノヒー <130分> 配給・アース・スターエンターテイメント ★★★☆☆

かなり興味深い新作なのに、3回だけの試写なので焦って駆けつけた。

ルイジアナ州辺り、ミシシッピー河口に浮かぶの離島にはハリケーンによる被害で、モーターボートが大木の上に引っかかっている。

14歳の少年ふたりは、親の目を盗んで、手作りボートで無人島を探検して遊んでいたが、その木の上のボートには住人がいることを知った。

その不審な住人マシューは、無精な暮らしはしているが、少年たちには親切で、ある日、毒蛇に噛まれた少年を救い病院まで搬送したのだ。

この謎の男の不審な過去は、少しずつ背景が察することができる、どうやら警察の捜査を逃れている逃亡者らしく、地元の人間関係が少しずつ見えてくる意図が聡明だ。

脚本もジェフ・ニコルスが書いているが、「ハックル・ベリーの冒険」や「アラバマ物語」のテイストが懐かしい。

少年二人の冒険心は「スタンド・バイ・ミー」に似ているが、ベースにあるディープ・サウスの陰険さは、アーサー・ペンの「逃亡地帯」に近い。

前半はやたら謎めいた展開で眠くなったが、マシューの背景が少しずつ見えて、恋人のリース・ウィザースプーンが登場する辺りからドラマは締まるのだ。

とくに、謎めいた運河の隣人のサム・シェパードが絡みだし、おおお、あのジョー・ドン・ベイカーまでが出てくると、これは70年代のニューシネマ感覚。

監督は前作「テイク・シェルター」でも好演した「ICE MAN/氷の処刑人」のマイケル・シャノンも再度起用して、この人間ドラマに厚みを加えている。

このところ、やたら好調で、出演作品の多いマシューは、この作品の好演もあって、おそらくは「ダラス・バイヤーズ・クラブ」で次回アカデミー賞の本命に踊りだすことだろう。

犯罪ミステリーというよりは、いかにもアメリカン・インディーズの懐かしい体臭を持ったヒューマン・ドラマとして、見応え充分。パワーのある一本であった。

 

■渋い当たりがサードの左を破り、レフト線を抜けるツーベース。

●2014年1月18日より、ヒューマントラストシネマ渋谷などでロードショー