細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『エヴァの告白』は時代の悲劇を訴えたかったのだろうか?

2013年12月19日 | Weblog

12月17日(火)13-00 外苑前<GAGA試写室>

M-156『エヴァの告白』The Immigrant (2013) wild bunch s.a. / world view entertainment holdings

監督・ジェームズ・グレイ 主演・マリオン・コティアール <118分> 配給・ギャガ ★★★

1921年。祖国ポーランドの戦乱で両親を失ったマリオンと妹は、アメリカに渡航してきたが病弱の妹は入国拒否。

ブルックリンの貧民街で裏商売で売春も仕切っている曲者のホアキン・フェニックスの誘いで、無銭のマリオンは安アパートに連れ込まれる。

冒頭のニューヨーク、エリス島の入国監査のシーンは、エリア・カザン監督の「アメリカ、アメリカ」や「ゴッドファーザー」でおなじみのシーン。

どんよりとしたマンハッタンのシルエットや、自由の女神の遠い姿は、薄暗くてダークな、この映画のイメージを背負って息苦しい。

どうにか安キャバレーで日銭を貰うようになった気丈なマリオンも、予想外に厳しいアメリカ上陸の壁に、絶望的な毎日がのしかかってくるのだ。

ああエミール・ゾラの「女の一生」の再現のようなダークな映像は、ここぞとリアルな映像で迫り、マリオンの表情も体調も落ち込んで行く。

いかさま手品師のジェレミー・レナーの登場で、かすかにマリオンの表情にも明るさは見えたのもつかの間で、現実は厳しい悲劇の壁を描いて行く。

要するに、この20年代はヨーロッパもアメリカも混乱と漂流の時代で、こうして自由の国を目指して大西洋を渡っても、現実は泥沼だったのだ。と映画は諭す。

アカデミー受賞のマリオンのための薄幸な女性ドラマは、いかにも古風で、何か新しい女性としての活路を見せるかと期待したが、映画は暗澹としたまま。

やっと悪人ホアキンの捨て身の行動で、病弱な妹は施設から不法に解放されるが、ドラマの重さは、それだけでは、とても「感動」にはほど遠い。

ラストで、マリオンの演じるエヴァが、教会の懺悔室で、自分の犯した罪を神父に告白するが、この程度の軽罪は衝撃もなく、この時代には誰でも犯していた筈。

たしかに役達者な三人の名優を揃えたという本格人間ドラマの様相は見せているが、感情的な発露がないままに映画が終わるのには、はかなさ、だけが残った。

ああ、ジャンヌ・モローの「エヴァの匂い」の方が、奔放で面白かったなーーー、なんて愚痴も言いたくなった。

 

■シャープな打法で、いい当たりのライトフライだが、あまりにも野手の正面。

●2月14日より、日比谷TOHOシャンテなどでロードショー