細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『とらわれて夏』の懐かしいあの夏の終わりの感傷。

2014年02月07日 | Weblog

2月5日(水)13-00 神谷町<パラマウント映画試写室>

M-014『とらわれて夏』Labor Day (2013) paramount picture / indian paint plan 

監督・ジェイソン・ライトマン 主演・ケイト・ウィンスレット <111分>配給・パラマウント・ピクチャーズ・ジャパン ★★★☆☆

邦題の感傷的な視線で見ると、これも「おもいでの夏」の系統かもしれないが、原題の「レイバー・デイ」は勤労感謝の日、みたいなもの。

アメリカでは8月の終わりの国民休日で、キム・ノヴァックの出た名作「ピクニック」を思い出す。つまりアメリカでは年度代わりの節目で、よくドラマになった。

ウィリアム・インジの「ピクニック」は戯曲で、非常にドラマティックだったが、こちらは離婚によるメンタルな障害を持った母を見つめる少年の視線。

ニューハンプシャーの田舎町に、脱獄して負傷している中年男が、その母子家族の家にかくまってもらう5日間をセンチメントに描いたもので、犯罪映画ではない。

しかしその指名手配犯はテレビでも報じられていて、それを承知で微妙な情愛の経過となるのは、戦後よくあったニューロティックなフィルム・ノワールに似ている。

ロバート・ライアンとアイダ・ルピノ主演の「Be Careful Stranger」や「危険な場所で」のようなサスペンスが臭うが、ここでは少年の無垢な視線がフィルターとなっている。

だから、ジェイソン・ライトマン監督としては、お得意の「JUNO・ジュノ」のような、アメリカン・ファミリー・ドラマとしての節度を保ちつつ、サスペンスの味付けは微妙だ。

しかも母親役のケイトは例によってナーヴァスな演技によって、ドラマの健全さを危うくしていて、そこがゴールデングローブ賞でもノミネートされた。

残念なのは逃亡犯のジョシュ・ブローリンで、「ショーシャンクの空」のティム・ロビンスの「逃亡者」としての妻殺し容疑者ほどのデリカシーが伺えないのだ。

だから、どうしてもあの70年代の頃のテレビ・シリーズのような視線に見えてしまう。だから質感はとても懐かしくもあり、もどかしさも伴ってしまうのだ。

ただ、ラストでハッピーエンドを用意したライトマンの気遣いには、彼らしいやさしい視線があって、好印象なホームドラマに着地しているのは、さすがだ。

 

■セカンド頭上のフライだが、幸運にもグラブをかすめたヒット。

●4月下旬より、日比谷シャンテシネなど全国ロードショー