細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『なまいきチョルべンと水夫さん』の賞味期限切れのビミョウな味。

2014年04月23日 | Weblog

4月22日(火)13-00 六本木<シネマートB3試写室>

M-041『なまいきチョルべンと水夫さん』Tjorven, Batsman och Moses (1964) AB svensk filmindustri スウェーデン

監督・オッレ・ヘルボム 主演・マリア・ヨハンセン <92分> 配給・クレスト・インターナショナル ★★☆☆

試写室に入るまで、この映画が50年も昔の作品だとは、うかつにも知らなかった。ま、年代物の骨董品も、もちろん、良ければいい。

しかし、問題は、なぜ50年もしてから、こうして発掘公開するのか。それならば、いまよくレンタル・ショップで見かける<発掘DVD>でも、いいではないか。

ちょうど50年前のスウェーデン映画といえば、「野いちご」や「沈黙」などの巨匠イングマール・ベルイマンの枯淡な作風が大変に衝撃だった時代。

だから、とくに北欧の映画というのは、孤高で端正な知的作品が多いのか、という強い憧れを抱いたものだった。

同時に、60年代には、ジャック・タチの「ぼくの伯父さん」や、ルイ・マルの「地下鉄のザジ」のような、コミックな子供目線の作品も人気があった。

おそらく、この作品も、その時代で人気のあった少女コミックだったろうが、日本で公開するには、リスクも多くて見送られたのだろう。

アストリッド・リングレーンの原作では「ロッタちゃん」のいくつかが日本でも公開されて、そのオフビートな面白さは、それなりに印象に残ったものだ。

ロッタちゃんほど意地悪ではないが、この映画のチョルべンという、やや肥満型の少女もユニーク。いわゆる西洋人形とは異端にいるようなメタボな個性派だ。

ストックホルムよりは、やや東に位置するこの映画の舞台になったウミガラス島は、おそらくは保養地なのだろうが、チョルペンの家族たちは日常的に生活している。

裕福ではないが、大きな老犬の<水夫さん>と仲良しの少女は、アザラシともよく泳いで遊んでいる。そこにキツネも加わって、ウサギが殺された事件で島は騒々しくなる。

要するに少女漫画の世界なのだろうが、多くの動物たちや、善良な大人たちも、この小さな島の中で大騒ぎして暮らしているのが、50年しても何も変わっていない。そこがこのメルヘン世界の魅力なのだろう・・・が。

情報過多な現代とはまったく別の自然環境でも、少女たちは幸福な日々を送っているという、そのノホホンとした時代回帰した世界も、タマにはいいか。というお好きな方は、どうぞ。

 

■ファールで粘ってのプッシュバントだが、ファーストの正面。

●7月19日より、新宿武蔵野館などでロードショー