細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『her/世界でひとつの彼女』とのアマイ恋の行方とプッツン消去。

2014年05月18日 | Weblog

5月14日(水)13-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-050『her・世界でひとつの彼女』 HER (2013) annapurna pictures / untitled rick howard company

監督・スパイク・ジョーンズ 主演・ホアキン・フェニックス <126分> 配給・アスミック・エース ★★★☆☆☆

擬人化ラブストーリーのひとつだが、実に感性豊かで感動的なストーリー・テリングは、さすがアカデミー・ノミネート作品。

近未来のLAという設定だが、ま、それはともかくとして、<AI>という人工知能が完全に一般に市民化された超未来の設定は判りやすい。

要するにパソコンやスマホが人格と知覚の上に、人間的な感情も持っているから、いつでもイヤホーンひとつで理想の異性と対話ができるという時代。

「2001年宇宙の旅」にでた人工頭脳「ハル」が、もっと進化してコンパクトになった、という時代のはなし。

妻と別れたホアキンは、孤独を癒すために、架空の出会い系サイトで<サマンサ>という女性の声をした通話相手と日常的に会話している。

もちろん相手は機械を通じての知能なので実体はないから、会う事はできないが、それはホアキンにとっては都合がいい。

ただ、日常的に会話する女性が欲しいだけなのだから、この交際は微妙に情感を生んで行く。これは実に現代人の欲望を端的にいい得ていて面白い。

普通の独り言でも、この<OS・!>というコードにアクセスすれば、即座にいつでも会話ができるのだから、彼は次第にその美声にハートを依存していく。

ま、むかし、トム・ハンクスが人魚に恋した「スプラッシュ」や、スピルバーグの「A・I』にも共通する空想人格とのコミニケーション。

上海でロケをしたという、近未来の摩天楼の生活をスケッチする監督の話術は、じつに饒舌であって、ついついこちらもその利便性な恋におちていく。

ま、当然のように、破綻はすぐに現実になり、2時間のラブストーリーは呆気なく消えるが、それにしては、よく出来たラブストーリーで酔わされる。

ホアキンの例によっての名演もいいが、<サマンサ>という声だけのスカーレット・ヨハンソンの演技も頷けた。

 

■ライトのフェンス上段に当たる意外なスリーベース

●6月28日より、新宿ピカデリーなどでロードショー