●9月3日(水)13-00 半蔵門<東宝東和試写室>
M-097『荒野はつらいよ/アリゾナから愛をこめて』" A Million Ways to Die in the West (2014) Universal Studios
監督・主演・セス・マクファーレン 共演・シャーリーズ・セロン <116分> 配給・ユニヴァーサル、シンカ・パルコ ★★★
エッチなテディベアの傑作『Ted』の監督セスが、ここでは開拓時代の西部で、悪漢と決闘に挑むまでの苦労をシニカルなコメディにしていて、かなり苦笑させられた。
昔の西部劇量産の50年代に、ほとんどの西部劇に親しんだ当方には、ここでセスがコメディにしている<ネタ>は承知しているので笑えるが、若いファンには如何なものか。
要するに傑作『腰抜け二挺拳銃』のボブ・ホープが演じた臆病な歯医者の役を、ここでセスはグレン・フォードの<シープマン>のように、羊飼いの青年として登場。
赤い荒野をバックに、いかにも勇壮なバーンスタイン風の音楽と、シネスコ・サイズの大画面いっぱいに派手なオールド・ゴシック風の立体文字でクレジットが流れるのが、ご挨拶。
あとは西部劇の常套のシーンが続々と出てくるが、いかにも小心で批判的なセスの目には、この西部の舞台は、まさに<ユニヴァーサル・スタジオ>のウェスターン・ステージ。
それをネタにして、ことごとく、今の感覚でオチョクるという寸法だ。そこに「カラミティ・ジェーン」のようなガンプレイの素早いシャーリーズ・セロンが絡んでくる。
というのも、極悪人のリーアム・ニースンが、実は元カレであって、この街に彼女を奪還しようと現れたので、何かとおつきあいのあるシープマンのセスが決闘に挑む事になる。
そこで拳銃の早撃ちをシャーリーズに特訓されるのだが、並べた空き瓶にも全然タマは当たらず、さああーーーどうする決闘は? という、ま、一応のネタは揃えて笑わせてくれる。
しかし、当時は、実は西部の食料事情は最悪で、医者も薬もない未開地では、ほとんどのカウボーイは若死にしたのだ、という逆説。これは笑えない。
しかもセス独特の<下ねた>が多すぎて、どうも悪臭を放つのには、ボブ・ホープ・ファンには失望だ。しかも決闘で銃弾にカラクリするなど、オチとしては笑えない。
ひとつ笑えたのは、古い納屋で「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の博士が、一生懸命にタイム・マシーンの、あの車を修理しているシーンは、さすがユニヴァーサル・ネタ。
あのジョン・ウェインたちの古き善き西部劇の時代は、かくも遠い昔ばなしに成り果てた、という苦笑いの一編だった。
■散々にファールして、結局は痛くないデッドボール。
●10月10日より、全国ロードショー