●9月5日(金)飯田橋<角川映画試写室>
M-099『ガンズ&ゴールド』" Son of a Gun " (2013) Screen Australia / Lotter West / SOAG Holdings 豪
監督・ジュリアス・エイヴァリー 主演・ユアン・マクレガー <109分> 配給・KADOKAWA ★★★
珍しく、いつも善良な清潔イメージのユアンが、ここでは徹底的なアクトーを演じていて、「トレインスポッティング」や「シャロウ・グレイブ」での、デヴュー以来の原点帰還か。
ま、ベテランの役者は「太陽がいっぱい」のアラン・ドロンのように、根っからのワルを演じてみたいのだろう。その役者根性はよくわかる。
タイトルも「サン・オブ・ア・ガン」というのは、あちらでは「拳銃の息子」ではなくて、「チクショー」や「呆れた奴」「たまげたなー」というような隠語。
だから、その言葉には、大して意味はなく、通常に唾棄すべき言葉。従ってこの新作も「サナバビッチ!!!」という感覚なのが、タランティーノ的で面白い。
悪党のユアンは獄中で新入りの若者が半年の刑期なので、やたら親切に面倒をみて、周囲のイケメンのケツ狙いの暴漢から救ってやる。それにはもちろん魂胆があった。
出所したブレントン・スウェイツは、さっそくユアンの指示で彼の部下を招集して、何とヘリコプターで刑務所の中庭を急襲してユアンを空中脱獄させる。このアイデアが面白。
脱獄に成功したユアンの一味は、かねてから目をつけていた鉱山の金鉱から、大きな金塊を強奪したが、それを狙っていたロシアン・マフィアとの壮絶な銃撃戦が展開していく。
監督はデ・ニーロの「ヒート」を監督したマイケル・マンの作風に憧れているというだけに、随所にあのマン・タッチをコピーして見せるのは、ご憧憬の趣味人としては嬉しくなる。
たしかに夜景の処理や派手な銃撃でのサスペンス・シーンのアングルや、背景の音楽などは、まるで「ザ・クラッカー」のようで、いかにコピーとはいえ、映画のタイプとしてはワクワクする。
無精髭のユアンも、まるでオーストラリア休暇の悪友たちとの豪遊のように、久しぶりに徹底的なワルで、「デンジャラス・ラン」のデンゼルのような無礼講はブレーキが効かない。
歯止め役のブレントンは、いかにもイケメンの若手で爽やかだが、亡くなったポール・ウォーカーのような苦味がまだ未熟で、どうしてもユアンの暴走についていけない。
こんな悪道は、劇的な死に方をしないと、見ている方は納得できないが、まさかこの優柔不断なラストで、もしかの続編を狙ってる魂胆なのだろうか。
■痛烈なライト線へのヒットだが、セカンドを狙ってタッチアウト。
●11月1日より、シネマサンシャイン池袋ほかでロードショー