細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『デビルズ・ノット』でもまたも追求される猟奇殺人事件の謎とは?

2014年10月22日 | Weblog

10月17日(金)13-30六本木<シネマートB2試写室>

M-117『デビルズ・ノット』" Devil's Knot" (2013) the weinstein company / worldview entertainment

監督・アトム・エゴヤン 主演・コリン・ファース <114分> 配給・キノフィルムズ ★★★☆☆

1993年5月5日。アーカンソー州ウェスト・メンフィスという山麓の町で、実際に起きた少年3人の殺害事件の不可解な真相に迫ろうとする作品。

このところ日本でも多発している少女の誘拐殺害事件だが、この作品のユニークなポイントは、検挙され裁判で刑が実際に執行された犯人3人は誤認逮捕ではないか。というポイントだ。

今も不透明な事件に対して、ショーン・ペンなどが再調査を懇願しているという不思議な事件。映画は無惨にも殺された3人の少年たちに、実名で捧げられている。

どうしてこんなことになったのか。事件はまるで「スタンド・バイ・ミー」と同じ様に、少年3人の山林への冒険から始まるが、失踪のあと警察の捜索で、山の河底から彼らの裸体死体が発見された。

つい先日見たばかりの「オオカミは嘘をつく」も似たような事件ものだったが、この作品は、緊急に逮捕された不良グループの曖昧な供述から、どうも釈然としないままに終身刑が執行された。

主演のコリン・ヒギンスは、事件とは直接は関係のない私立探偵だが、この裁判の成り行きに疑問を感じて、独自の捜査をしていくが、謎は深まるばかりで、真相不透明のままに映画もフェイドアウト。

過去にも「スイート・ヒアアフター」や「秘密のかけら」などでも、いつも事件の真相を凝視した視線の作品を作るアトム・エゴヤン監督も、またここで地域の持つ慣習や異教への恐怖を臭わせる。

という意味では、あのジョン・ブアマン監督の傑作「脱出」での、謎を秘めたアメリカ山岳地帯の秘められた悪魔的習慣や、地域住民の持つ意固地な習性にも視線をちらつかせていく映像だ。

過去にも多くの魔女狩りや、クルックス・クランの黒人処刑のあった土地柄か、裁判シーンも異様な保守的な空気が流れ、アーサー・ペンの秀作「逃亡地帯」の匂いも感じてしまい複雑だ。

つまり、これは犯罪サスペンスでも、事件追及の探偵ものでもなく、ことの真相は、この作品を見たひとの良識に問う、というスタイルで、あの「アラバマ物語」のような感動ものでもない。

その辺がエゴヤン監督の個性でもあって、当然、釈然としない印象で終わるのは、実際にあった事件に対しての地域住民の移住社会への心のしこりでもあるのだろう。

 

■ライト前のライナーを、地面スレスレで野手が好捕したが、ワン・バウンドとビデオ判定。

●11月14日より、TOHOシネマズ・シャンテなどでロードショー