●6月18日(木)13-00 京橋<テアトル試写室>
M-075『さよなら、人類』" A Pigeon sat on a Branch Reflecting on Existence " (2014) Svenska Filmstitutet, スウェーデン
監督・ロイ・アンダースン 主演・ホルガー・アンダーソン <100分> 配給・ビターズ・エンド
スウェーデンのフィルム・インスティチュートで、映画と文学で学位を取得したアンダースンの作風は、すべてがアートといえる自画の緻密な絵コンテで成立している。
その画集はまさにアートであって、映画というよりは、総合的なグラフィック・ジニアス。二子玉川の蔦屋家電に置いてある画集を見ていると、その凄さに一時間はかかる。
構想15年、撮影に4年もかけたというシーンは、どこを取っても独特のブラック・ユーモアとアート・レベルに貫かれたような資質であって、まったく愉快で、恐れ入ってしまう。
いきなり<死との出会い>という、まさに呆れる様にトボケた突然死のスケッチを披露するが、まさに人間の死は、その生と同様に、ごくありふれた場面で起こりうるという視点。
サムとヨナタンという、見るからに冴えない<おかしな二人>が、多くの奇妙なエピソードの案内役のような感じだが、それでも唐突に時代は逆流して、変化してしまうのだ。
その冷静で皮肉で、しかも知的なアングルは、人間の普段の視線に似ていて、まさにごく日常的なシーンの連続だが、このアンダースン<目線>にかかると、すべてがダークなイラストレーションのようだ。
おかしな生活のスケッチは、グレイのトーンで統一されて、ほとんどはパントマイムのように多くは語らずに、その人間達の奇妙な、しかし大真面目な行動でスケッチされていくので飽きない。
それぞれに、あの先日見た「人生スケッチ」のように誇張されてはいないが、かなり独特のシニカルな切り取りで、まさに4コマ漫画のようなおかしさと皮肉に彩られている。
ほぼ100分の上映時間に、そのブラック・コミックの挿話は止めどもなく語られて行くが、いちいち説明も関連性もなく、しかしその全てが<人生の愚かさ>を冷笑していくようだ。
という意味では<動くおとなの漫画>という枠で括られて行くが、アメリカの<エスクァイア>や<ニューヨーク・タイムス>などのカリカチュアとは、まったく異質の北欧らしいクールさがおかしい。
これこそが<ロイ・アンダースン・ワールド>なのであって、説明するのは愚かな事だ。ヴェネチア国際映画祭でグランプリ受賞というのは、まったく異存がない。お見事な、考えさせる喜劇作品。
■ファールで粘ったものの、レフトのポールをかすめるホームラン ★★★★
●8月8日より、YEBISU GARDEN CINEMA 他でロードショー