細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『かけがえのない人』やはりポール・ウォーカーの喪失は大きい。

2015年07月01日 | Weblog

6月19日(金)13-00 六本木<アスミック・エース試写室>

M-077『かけがいのない人』" The Best of Me " (2014) Relativity Media / Di Novi Pictures / N. Sparks Pro.

監督・マイケル・ホフマン 主演・ミシェル・モナハン <118分> 配給・ブロードメディア・スタジオ

ロマンティックなラブ・ストーリーは嫌いじゃないが、どうも一方的に思い過ぎの<ハーレクイン・ロマンス>というのは個人的には困りものだ。

あの「きみに読む物語」で、世界的なヒット・ライターになったニコラス・スパークスが、二匹目のドジョウを狙って、自身のプロダクションで作ったという新作。

しかも監督にジョージ・クルーニーの「素晴らしき日」や「終着駅トルストイ最後の旅」のホフマン監督が起用されているので、これは見逃せない、と感じた。

主演には、あのポール・ウォーカーを予定していたというが、事故で亡くなり、急遽、起用されたのが、かなりポールにそっくりさんのジェームス・マースデン。

だから、たしかにポールをイメージしたな、と思われるシーンが多いが、問題はその事故によって、彼の若い時代のシチュエーションが増えたために、作品のバランスが崩れたようだ。

ストーリーは、いかにもスパークスらしい発想。青春時代に恋人だったふたりが、家庭の事情で別れてから20年の歳月が経ち、運命的なきっかけで再会する。

海洋石油開発の事故で奇跡的に助かった彼は、静養に20年ぶりに帰ったルイジアナで、かつての恋人で人妻のミシェルに出会うが、彼女は家庭崩壊寸前の危機だった、というパターン。

そうゆう話で、20年ぶりの初恋が、紆余曲折がいろいろあって、やっと結ばれるというラブ・ストーリーは沢山見て来たが、この作品はキャスティングが致命的なミス。

しかもストーリー・テラーの必要から、青春時代の時間が多すぎるのに、いまの中年の二人と似ていない俳優を起用しているので、どうも感情移入ができないのだ。

つまり、シナリオの段階でのミスが、恐らくポールの事故死で書き換えられて、大幅な修正をしての無理な作業が、この作品のひび割れになっているようだ。

好演のマースデンには気の毒だったが、もしポールが生きていれば、このような煩雑なストーリー構成にならなかっただろうと惜しまれる。初恋の修復は大変なのですよ。

まさにこの映画の企画は「かけがいのない人」を事故で失ったのだった。

 

■ヒットで出塁したが、代走がタッチアウト。 ★★★☆

●8月22日より、YEBISU GARDEN CINEMAなどでロードショー