細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『黒衣の刺客』に彩られる華麗な中国宮廷、美人アサシンの影。

2015年07月26日 | Weblog

7月16日(木)13-00 築地<松竹本社3F試写室>

M-090『黒衣の刺客』" The Assassin " ( 2015) Spot Films / Sil-Metropole Organisation Ltd. 台湾、中国

監督・ホウ・シャオシェン 主演・スー・チー <108分> 配給・松竹メディア事業部

非常に絞り込んだ独特の耽美的な映像世界を主張してきたホウ監督の8年振りの新作は、8世紀後半の唐王朝を舞台にした女性アサシンのサスペンス。

とはいえ、華麗な色彩で再現される栄華な王朝での映像世界の再現で、映画としての魅力は、そのテーマの暗殺陰謀よりも、とてつもなく優美な当時の華麗なヴィジュアルだ。

過去の「悲情城市」や「珈琲時光」などでも、ほとんど俳優のアップは撮らずに、ミドルからロング・ショットを基調にした映画作りは、まるで深艶なステージを見ているよう。

毎度のようにヨーロッパの国際映画祭でグランプリを受賞しているのは、その歴史や映像世界を、独自の美意識に忠実に守り、娯楽的な視線を拒否し続けている作家性の頑さだろうか。 

だから周到な歴史研究と、まるでオペラのように凝縮された栄華なステージと照明の微妙さは、ギレルモ・デル・トロが絶賛するほどアート性に貫かれていて、映画というよりは中国古典美術館。

しかも、ほとんどの台詞を排して、シェークスピアのギリシャ悲劇のステージのような、研ぎすまされた照明による映像表現は、ちょっと最近見る事はできないレベルだ。

ところが、なぜか、この試写の最中に、ちょうどスタートして20分位して、ストーリーの様子が読めるようになった瞬間、あああ、突然の停電。

しばらくして、どうやら松竹本社ビルが全館停電になったというアクシデントに、退席したひともいたが、外は暑いので、ジッと待つ事30分。

やっと試写は再開されたのだが、こちらは気持ちよく昼寝をしていたらしく、また再開されたストーリーもロングショットが多いので、ストーリーがフォローしきれない。

後半になって、わが妻夫木聡くんが出て来ても、変装していてアップはないので、どこに出て来たのかも判らないままに映画は終わってしまった。

やはり、あの中断した時に退出すべきだったが、もう一度見に行くほどの元気もない暑さ。実に不運な試写となったので、野球の雨による中断ゲームのドローのような印象になった。

カンヌ国際映画祭で監督賞受賞という、この栄誉も、頑な監督のステージ・アートを固執する美意識に捧げられたのだろう。

 

■打席の時に雨で中断。再開後も見逃しのフォアボール。 ★★★・・?

●9月12日より、新宿ピカデリーなどでロードショー