細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『アメリカン・ドリーマー*理想の代償』夢を強奪する男の背中を見つめて・・・

2015年08月21日 | Weblog

8月18日(火)10-15 外苑前<GAGA試写室>

M-103『アメリカン・ドリーマー*理想の代償』" A Most Violent Year " (2015) Filmnation Entertainment / Participant Media

監督・脚本・J・C・チャンダー 主演・オスカー・アイザック <125分> 配給・ギャガ

ロバート・レッドフォードが、自家用ヨットでひとりきりで南太平洋を漂流するという、ワンマン・サスペンス「オール・イズ・ロスト」という異色作が先年あった。

その脚本と監督だったチャンダーの新作というのに加えて、主演が「インサイド・ルーウィン・デイビス」で、これまた大注目のオスカーが主演となると、これは傑作の予感。

1981年のニューヨークで、南米出身の移民がオイル・ビジネスで伸し上がるが、執拗なマフィアや商売敵などの横暴な横連坊で、彼のアメリカン・ドリームは挫折の連鎖だ。

実際のタイトルは「もっともヤバい年」という、石油の輸送販売組織にとっては、まさに内戦状態のような危機感が鬱積して、彼の会社のオイル運搬車量も襲われたのだ。

多くの借金を抱え乍らも、着実に<アメリカン・ドリーム>を実現するために、オスカーは愛妻のジェシカ・チャスティンと共に郊外の豪邸で悠々自適の生活だった。

ところが、この年は、多くの妨害工作があったうえに、オイル・ビジネスでも原油調達や輸送事業での妨害トラブルが続発して、オスカーは人生の大ピンチに立たされていた。

どこか、あのエリア・カザン監督の「アメリカ、アメリカ」や「波止場」で見たような、アメリカという大国での夢への妨害が、まさに日常的に周辺から勃発するという構造。

それは「ゴッドファーザー」のような、マフィア組織などの異民族のパワー・ゲームに似ているが、この作品は犯罪映画ではなく、あくまでビジネスの内部パワー紛争を描いて行く。

その辺が、バイオレンス映画ではなくて、あくまで実直にビジネスをしていく上でのトラブルなので、娯楽映画のような派手なエンターテイメントはなく、ジミながら正統社会派映画の気品がある。

傑作「ルーウィン・デイビス」で光ったオスカー・アイザックは、まさに堂々の主演で、これからの「スターウォーズ・フォースの覚醒」や「Xメン」などの活躍が目に見えるようだ。

まだ、あのツイン・タワーが見えるイースト・マンハッタンでのロケは、CGによって80年代を再現して見せてくれるが、ドラマは堅実に、あくまで実直な人間性を見つめて行く。

という意味で、実に入念な人間ドラマに徹している分、ユーモアとか、アクションは控えられた、まさに<アメリカン・ジャスティス>の本質を描く、正当な硬派ドラマの傑作。

おそらく、次回のアカデミー賞では、作品、主演男女優、助演男優他の部門で、多くのノミネートが予想される風格はあった。

 

■ショート頭上を抜くクリーン・ヒットがフェンスまでのツーベース。 ★★★☆☆

●10月1日より、全国ロードショー