●8月25日(火)13-00 外苑前<GAGA試写室>
M-107『ラスト・ナイツ』" Last Knights " ( 2015) Lionsgate , DMM .com, Luka Productions
監督・紀里谷和明 主演・クライブ・オーウェン <115分> 配給・KIRIYA Pictures / GAGA
あの『CASSHERN』や『 GOEMON』などの劇画アクションで定評のある紀里谷監督が、何と5年もの歳月をかけて作ったハリウッド・アクション。
まさに「ラスト・サムライ」と同じようなテーマだが、恐るべし「最後の忠臣蔵」のように、あの「47RONIN 」に負けじと、忠臣蔵をベースに作った新作。
ハリウッドがキアヌ・リーブス主演で「47 RONIN」を制作していた時に、テーマがバッティングしている関係で、なぜか完成が遅れていたという問題作。
なにしろ、この手のハード・アクションには定評のあるクライブ・オーウェンが主演というので、勝手に心配して見たが、これは国籍不明な中世剣劇のダーク・フィルム。
時代は中世らしいが、とある封建国家の御家騒動ぶりは、まさにシェークスピアの重厚な「リチャード三世」や「ヘンリー五世」などを思わせる雰囲気で息苦しいのだ。
撮影はチェコで行ったらしいが、人件費はもちろん、異様な中世風な古城や、その周辺の森林も、まさに紀里谷監督の狙ったような暗黒世界で、いちども太陽の光のない世界。
またしてもモーガン・フリーマンの重厚なナレーションと僧侶のような扮装で、その暗い城内のドラマは圧倒的にリアルで、まるであの「薔薇の名前」のイメージで圧倒するのだ。
ま、ストーリーは城内の権力闘争であって、さすがに重厚な演劇本格派がキャスティングされていて、舞台劇のような演技とライティングで、オペラの舞台のような重みは本格的。
実に久しぶりに、あの香港の美男、アン・ソンギが、何ともご無沙汰のあいだに老年のジーさんになって顔を見せたのは懐かしくも嬉しかった。
かなり演技本意で選択されたキャストは国際色豊かで魅力的だが、まるでチェコでの冬期オリンピックのような異文化混合のエスニック感覚には、どこか劇画の実写映画のような軽さもあって、不思議な味わい。
基本的には日本刀での殺法のような太刀さばきアクションなので、やはり「忠臣蔵」の中東版という印象か、まったくユーモアの入り込む余地のないお家騒動なので、見ている方もバテテしまう。
ベルトルッチの「ラスト・エンペラー」のような仕上がりを期待すると、この息詰まる暗黒ワールドには、派手なチャンバラのアクションも豊富でいいが、バテバテになるようだ。
■大きなファールで粘ったのだが、豪快なライナーはセンター正面。 ★★★☆
●11月、TOHOシネマズ スカラ座でロードショー