細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『スティーブ・ジョブズ』が駆け抜けた疾風の10年間。

2016年01月22日 | Weblog

1月12日(火)13-00 半蔵門<東宝東和試写室>

M-006『スティーブ・ジョブス』" Steve Jobs " (2015) Universal Pictures / Legendary Films

監督・ダニー・ボイル 主演・マイケル・ファスベンダー <122分> 配給・東宝東和

こうしてブログを更新しているのも、もとはといえばスティーブ・ジョブスの功績であり、彼の残したコンピュータの個人所有に残した偉業は大きすぎる。

1984年といえば、わたしはまだ会社員であって、文書はオリベッティのタイプライターで書き上げるのが常識で、映画の評論などもそれをファックス通信していた。

当時は、それですべてはOKだったし、巨大な電子機器のようなものは、会社の経理部が、給料計算に使っている程度だったのだが、ある日、がらりと様子が変わったのだった。

わたしは、個人的にはPCや、電子機器には興味がなくて、90年代の後半には、突然、デスクの上にPCが設置されて、会社員は全員が急遽、その研修のために通わされた。

あっという間に、会社の中はコンピュータ制御によるシステム化されてしまって、さっぱり訳のワカラナイPC関連の専門用語がはびこる様になり、時代の激変を知らされたのだった。

だって、デザインや色の配置は自分のアタマと手先で決定するものであって、当然、学生時代にはなかったシステムなので、わたしのように古風な趣味人とても信用できないのだった。

幸いにして、わたしは停年退職したので、デスクのPCとは会話も出来ないままに退職したのだが、さて、世間の様子もガラリと変化して、タイプライターによる原稿は遠慮させられた。

それからは、大きなかまぼこ型のワープロを買ったり、この映画のジョブスの影響で、マッキントッシュも買うことになり、アップルも、もうビートルズの時代ではなくなった。

さて、この映画は、その革命児のスティーブ・ジョブスのマッキントッシュ発表会から、驚異のアイマックス業界発表会までの、3大イベントを時代順で追ってみせるサクセス・ストーリー。

ま、いまや都会でPCを相手に仕事をしている人には、深い関わりを持っているマシーンは、あっという間に個人で使用するようになり、おまけにスマートフォーンも登場してしまったのだ。

これだけ、数年間の間に進化した業種もないだろうが、すべてはスティーブ・ジョブスのアタマの中から生まれたものであって、文句があろうがなかろうが、われわれは、その急変の時代にいる。

ある意味では「ソーシャル・ネットワーク」も、その時代の旋風に巻き込まれた青春だったが、この映画は、その嵐の張本人の苦労を描いて行くが、栄光とか名誉とは関係ないレベルの世界。

もしジョブスが生きていれば、ノーベル賞の対象になっただろうが、この映画は彼が全力疾走した1998年の<iMac>の発表会までの激変の時代の<苦いヒーロー>ジョブス氏を描いている。

たしかにマイケル・ファンスベンダーも変装の達人だけに、見事にスティーブ・ジョブスに化けているが、意外だったのは、サポートの女史を演じたケイト・ウィンスレットの変身ぶり。

これが女優としての、<役者根性>であって、この存在で、この映画のテーマが浮き彫りされていたようだ。

 

■いい当たりだが、意外に伸びのないセンター・ライナー。 ★★★☆

●2月12日より、109シネマズなどでロードショー