●12月12日(月)10-00 六本木<アスミック・エース試写室>
M-159『たたら侍』(2016) エグゼクティブ・プロデューサー・EXILE HIRO
製作・監督・錦織良成 主演・青柳 翔 AKIRA 小林直己 <135分・ビスタサイズ>
1300年も前の戦国時代、奥出雲で培われて来た<たたら吹き>という、純鉄の製法は、三日三晩も火を絶やさずに叩き作られて来た伝統の製鉄技術であった。
その技法によって叩き作られて来た日本刀は、他には例を見ない鋭利にして強度な資質を持って織田信長などにも信望が熱く、日本屈指の名刀として羨望の技法だったという。
若い職人の青柳は、名刀の技法を身につけつつも、一生をその山奥の村での名刀職人として生きる事に疑問を持って、多くの若者のように村を出て、サムライになろうとする。
しかし多くの苦難の末に戦国の戦いのなかでは、とても生き抜いてはいけない厳しい現実を知り、命からがらで奥出雲の村に逃げ帰って来たのだ。
そして戦渦の時代は激化して、名刀だけでなく火筒といわれる火縄銃の要求が多くなり、新たに製造を始めるのだが、しだいにその火器を狙って賊が進出するようになったのだ。
そこで青柳らは、村の若者たちを集めて、自衛の為に砦を囲み外敵の襲撃を防ぐ為に、村の要所要所に罠をはり、不測の襲撃に備える準備を始めたのだ。
ま、黒澤明の名作「七人の侍」の村人たちのように、自衛の為に戦いの準備をするのだが、あの映画のように落武者侍たちを雇うほどの予算もなく、そこは自衛手段を用意するしかない。
映画はその素朴な山奥の村人たちの質素な日常を描き、地の利をいかした戦闘シーンなどにも、かなり迫力のある映像で、久しぶりに本格時代劇の迫力を後半に見せて来る。
「日本人の心に帰り、日本人の原点を伝えたい・・・」という製作コンセプトで製作されたという点で、とくにエンターテイメントに走らない姿勢は伺えた。
その辺の気概と、時代色をいかしたリアリティが、モントリオール国際映画祭のワールド・コンペティション部門で、最優秀芸術賞を受賞したというから、ご立派な成果である。
エグザイルのHIROさんが中心になって、リアルな日本サムライの魂を描こうとしたスタンスは、ちょっと堅すぎたようだが、ここに<日本人の魂>の原点を探ろうとした意欲は感じられた。
■手堅い粘りでフルカウントからサード強襲ヒット。 ★★★☆
●2017年、初夏、全国公開予定