細越麟太郎 MOVIE DIARY

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●『素晴らしきかな、人生』には、まだ当分、時間がかかりそうだな。

2017年02月17日 | Weblog

2月7日(火)10-00 神谷町<ワーナー・ブラザース第2試写室>

M-017『素晴らしきかな人生』" Collateral Beauty " <Life Can Be Wonderful>  (2016) Warner Brothers / New Line Cinema / Village Road Pictures 

監督・デヴィッド・フランケル 主演・ウィル・スミス、エドワード・ノートン <97分・シネマスコープ> 配給・ワーナー・ブラザース映画

ちょっとクラシックな名画のファンならば、当然、フランク・キャプラ監督の名作「素晴らしき哉、人生」のリメイクか、と咄嗟に心配してしまう、が、関係ない。

原題は「コラテラル・ビューティ」といって、この映画のキーワードとして、ドラマの会話のなかでも再三に登場するが、日本語では<不幸中の幸い>とでも言うのか。

主人公のウィル・スミスは、ニューヨークで広告代理店として成功している会社のエドワード・ノートンとの共同創始者であって、シャキシャキの広告マンだった。

ところが突然の交通事故で妻を失い、そのショックで彼はまったく、生きる気力を失って、会社にいても放心状態で、親友の忠告にも上の空だから、会社経営もヤバい状態になる。

パートナーのエドは,精神科医の受診をすすめ、気分転換の方法を、いろいろと薦めるのだが一向に効果はなく、あの陽気なウィルも無精髭で放心状態の日々が続くのだった。

とうとう会社も傾き出して、従業員もポロポロと辞めて行き、このままでは一流だったアドヴァタイジング・エージェンシーも倒産の危機が迫っていた。

そこでエドは、ブロードウェイの劇団の連中に、芝居の稽古のつもりで、偶然を装ってウィルに近づいて、メンタルな底辺を持ち上げるような芝居をするように仕組んだのだ。

その3人の俳優たちは、それぞれにバイブルの<三人の賢者>の役を演じて、ハンフリー・ボガートの「俺たちは天使じゃない」のように、ウィルの窮地を救って行く。

という設定なので、アメリカでは古くからある設定で、そのヘンな賢者たちを名優ヘレン・ミレンやキーラ・ナイトレイらが演じているのが豪華なのだが、シナリオがまずい。

おまけにこの3人は<天使>なのに、ブロードウェイの俳優たち、という中途半端な設定なので、人生を軌道修正するようなパワーが感じられないのが非常にもどかしくなる。

しかも演出が「プラダを着た悪魔」のメリル・ストリープのクレイジーな大胆さがなくて、平板なので、全然、天使のアドヴァイスのような特殊効果が薄く、ウィルの回復も時間切れ。

せっかくのオスカー・ノミニー達が集まったのに、シナリオが平板なのと、演出に思い切った発想が乏しく、無精髭の不機嫌なウィル・スミスの空回りが目立ってしまった。

 

■三遊間の面白い当たりだが、高く上がりすぎて平凡なサードフライ。 ★★★

●2月25日より、全国ロードショー