●5月11日(木)10-50 二子玉川<109シネマズ・6スクリーン>
M-056『追憶』(2017) 東宝映画・「追憶」製作委員会
監督・降旗康男 撮影・木村大作 主演・岡田准一、小栗旬 <99分・ビスタサイズ>配給・東宝映画
高倉健がいなくなってから、その動向が注目されていた「ホタル」「鉄道員」などの監督、撮影の名コンビが、こうして久しぶりに復活したとあって、期待の一作。
たしかに個人的なレベルで、健さんの大ファンだった当方としては、正直、とにかく早く見たい・・・という映画が見当たらなくなって消沈していたタイミングでの公開だ。
北陸の寒い海辺の家で、身よりもなく育てられた3人の少年が、それぞれに成人してから離散した人生を送っていたが、25年の後に起こった事件で、偶然に再会するという運命的なストーリー。
似たような話は、96年に公開されたブラッド・ピットやロバート・デ・ニーロが共演した「スリーパーズ」という、バリー・レビンソン監督の映画で、あれは4人の少年のドラマだった。
ま、ブルックリンの不良少年グループの後日談と、ここでこの新作を比較するには、まったく異質なのだが、同じメシを少年期に食った仲間が、犯罪の反対側にいて宿命的に対峙するという話は泣けるのだ。
降旗監督は、健さんの「あなたへ」以来のメガホンというわけで、あの飄々と風の冷たい風景での人間達の葛藤ドラマというのは、とくに劇的な衝突はないが、独特の風景画としての佇まいはある。
という次第で、勝手にメランコリックな気分で見ていたのだが、さっぱり面白くならないのは、やはりそこに健さんや、笠さんのような懐かしい姿を探してしまう身勝手のせいか、どうもイカンのだ。
結局は岡田の刑事にしても、小栗のキャラにしても、どこか圧倒的な個性がなくて、昨年に見た「64」のような混然とした人間達の感情的盛り上がりも矛盾も衝突もなく、淡々としてドラマは終息してしまった。
こちらが勝手に、あの健さんがいた映画の時代の、あのドラマの虚しい残香や感触の渇きを期待したのがいけなかったのだろうが、気持ちが落ち着かないままに呆気なく映画は終ってしまった。
■いきなり初球を叩いてのセカンドゴロ。 ★★★
●全国東宝系で公開中