細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『スノー・ロワイヤル』の肌寒いローカル感情の冷たさ。

2019年06月04日 | Weblog

●5月9日(木)13−00 飯田橋<角川映画試写室>

M−035『スノー・ロワイヤル』"Snow Royale" (2018)Studio Canal, Paradox Films, Mas Productions

監督・ハンス・ペテル・モランド 主演・リーアム・ニースン、トム・ベイトマン <119分・シネマスコープ>配給・角川映画

アラスカのキーホーというのは、雪の深い厳寒の町なのだが、そこの除雪作業員のリーアム・ニースンは、除雪作業員として模範市民賞を受賞したマジメおじさん。

ま、森林警備員のような、その地域の管理員として生まれてから、この町にいる。

ところが人違いで、大切なひとり息子が事件に巻き込まれて死亡してしまった。

いつもはクールなリーアムだが、これにはさすがに琴線もキレてしまい、警察力では当てにならないので、とうとう単身で復讐の鬼となって麻薬組織を追いつめて行く。

アラスカの警察署長のトム・セレック主演の、あのロバート・B・パーカー原作の<ジェシー・ストーン・シリーズ>に似ているが、あれをリーアムが演じたような作品だ。

タランティーノの名作『ファーゴ』に似たような背景で、いかにも寒々とした風景での殺人事件捜査ミステリーなので、その豪雪下での捜査や銃撃はユニークだが、前例にはさすがに及ばないのは、キャスティングの軽さもあるようで、残念。

●6月7日より、全国ロードショー

 

 

 

 


●『誰もがそれを知っている』の肌寒いスペイン家庭の感性。

2019年06月04日 | Weblog

A5月7日(火)12-30 京橋<テアトル試写室>

M-034『誰もがそれを知っている』"Everybody Knows" (2018) Memento Film Productions , Morena Films. Lucky Red.

監督・脚本、アスガー・ファルファディ 主演・ペネロペ・クルス、ハビエル・バルデム <133分・ビスタサイズ>配給・ロングライド

スペインの片田舎は、のどかな田園の広がる平坦な草原と、色彩の豊かな農地を吹き抜ける風は爽やかで、すぐに昼寝をしたくなる気持ちの安らぐ地域だ。

わたしも若いときに、マラガからジブラルタルの果て迄ドライブしたことがあるが、吹く風がこれほど甘くておいしいと思ったことはないほどの楽園。

とくに観光地のマルべイヤは、カラフルな色彩に囲まれた天国のような港町で、白い壁とオレンジ色の屋根の並ぶ、まさにポストカードのままの視界が広がる。

アルゼンチンに住むペネロペは、妹の結婚式に出席するたまに、久しぶりにワイン畑の多い故郷に帰省したのだが、そんな美しい街にも、殺人事件は起こるのだ。

結婚式前の妹が突然に消えて、身代金を要求する手紙が届けられて、幸福だった家族は恐怖の混乱に落とし込まれて、複雑な家族関係が露呈して行く。

幸福の絶頂だった家族が、それぞれに得体の知れない恐怖に襲われて行くというファミリー・サスペンスで、これもまた恐怖のホームドラマ。

それをイラン出身で、2度もオスカー受賞のアスガー監督が、名優のハビエルと、実生活では奥様のペネロペを起用しての、これも重圧のサスペンスとなる。

どうしてもワケありの大家族の話しなので、ヴィスコンティの「家族の肖像」のように重くなるストーリーは、ちょいと平板で面白みのある展開にはならないのがモドカしい。

おそらく監督は、サスペンスのあるミステリーではなく、古い大家族の抱える血族の重圧を描こうとしたのか、長過ぎる口論には閉口したのも実感だ。

 

■センター前のゴロのヒットだが、オーバーランで惜しくもタッチアウト。★★★☆

●6月1日より、Bunkamuraル・シネマなどでロードショー