細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●『帰れない二人』の果てしなく熱い底なしの白日夢。

2019年07月04日 | Weblog

6月28日(金)12-45 京橋<テアトル試写室>

M-047『帰れない二人』" Ash is Purest White " (2018) Shanghai Film Group, Xstream Pictures / M K Productions <中国フランス合作>

監督・脚本・ジャ・ジャンクー 主演・チャオ・タイ、リャオ・ファン <135分ビスタサイズ> 配給・ビターズ・エンド  

あの傑作「山河ノスタルジー」から3年しての、いま、もっともパルムドールに値する監督と言われる中国映画監督ジャ・ジャンクーの新作。

北京でのオリンピック開催決定を契機にして、中国全土は活気づき、裏道ではヤクザの抗争も激化していて、殺人事件に絡みチャオは投獄され5年して出所。

あの殺しで助けた男リャオを探して彼女は列車の旅をして、西部の奥地ウィグル自治区の古都でダムの完成で水没するフォンジュへと、さすらいの旅をして再会する。

しかしリャオには妻がいて、貧しいながら家族がいたが、チャオとの再会で二人の関係は再燃焼してしまい、ドラマは泥だらけの逃亡北帰行となっていく。

複雑な人間関係を清算してから、また二人は一緒になろうともがく姿は、それは、あの<ボニー・アンド・クライド>のように、地獄への逃避行となっていく。

その血だらけの人間関係を、さすがは名匠のジャ監督は、急速に変化発展する中国の、多くの山間部の風景を、まるで文明の廃棄物処理場を見る様に描いて行く。

また燃え上がる中年のヤクザもの二人の恋は、こうした中国奥地の混乱と、まさに廃棄物未来都市のような背景を取り込んで、壮大な人間ドラマにしていく。

発展する上海などの栄華とは対照的に、その産業廃棄物置き場のようになっていく地方都市の乾燥した粉塵の風のように、二人の旅路は地獄へと向かって行く。

ちょっと、トリュフォの「暗くなるまで、この恋を」を思わせるが、さすがジャ・ジャンクー監督は中国人の個性とプライドで、感動的なラブストーリーに仕上げた。

まるで、あの志賀直哉の「暗夜行路」のような、しかし乾燥しきった中国大地と僻地を舞台にして、最近、もっとも素晴らしい人生廃棄物ラブストーリーだった。

 

■高く上がったフライは、レフトのポールを巻いてスタンドイン。 ★★★★☆☆☆

●9月6日より、渋谷bunkamuraル・シネマでロードショー