●7月18日(木)13-00 外苑前<GAGA試写室>
M-054『永遠の門・ゴッホの見た未来』" At Eternity's Gate (2018) Walk Home Entertainment Productions LLC /River Stone Pictures
監督・脚本・ジュリアン・シュナーヴェル 主演・ウィレム・デフォー、マチュ・アマルリック <シネマスコープ・112分> 配給・ギャガ、松竹
画家のフィンセント・ファン・ゴッホに関しては、われわれには、58年のカーク・ダグラスがゴッホを熱演した「炎の人・ゴッホ」が印象に深く残っている。
何しろ画家で映画監督で、同じ名前の巨匠、ヴィンセント・ミネリが描いた作品は、カークとアンソニー・クイン演じたゴーギャンの好演で評判だった。
もちろん、その昔の作品を比較する気もないが、当時のカークは絶頂期で、「バイキング」や「OK牧場の決闘」などで、人気も絶頂の時代だった。
多くのアカデミー賞にもノミネートされた作品の印象はまだ残っているので、ついつい初老のウィレム・デフォーが30代のゴッホを演じたのかが引っかかる。
しかし、そんな御託はともかく、ここで彼の演じるゴッホの狂気も、その正気との境界線が見え隠れするので、画家の狂気は巧妙に再現されていて見逃せない。
というのも、芸術家の天性の才能は、冷静な常軌をかすかに逸脱した瞬間に現れるものだから、ここでデフォーが演じているゴッホも、精神的な加齢は当然あるのだろう。
画家で稀有の友人ゴーギャンのアドヴァイスで、パリを離れて、太陽がいっぱいの南フランスのアルルに流れて来てから、ゴッホは明るい陽光の魅力に取り憑かれる。
キャンバスを担いで、広い南仏の田園丘陵を、あの名画に描かれた風景や橋を求めて歩き回る姿は、モジリアーニやロートレックとは対照的に屋外派で眩しい。
その画家ゴッホの描き出す風景は、いつも太陽の光を浴びて迷彩色が飛び散って行く、その画法も狂気も、あの自身の耳を切り落とすような狂気へと沸騰していく。
しかし映画はごく淡々とクールに描かれていて、あの大昔のカーク・ダグラスの狂気の沙汰ほどのヒステリックではなく、ごくクールに静観していくようだ。
ま、10月11日からの、上野の森美術館での<ゴッホ展>の、まさにコマーシャル映画という印象は、絵画ファンには格好の教材となるだろう。
■高く上がったセンターフライだが、フェンスまでは届かず・・。 ★★★☆☆
●11月8日より、全国ロードショー