●8月2日(金)12-30 六本木<キノ・フィルム試写室>
M-058『ドッグマン』" Dogman " (2018) Archimede & LE, Pacterai Cinemas, Eurimages , Regione Campania, POC.
監督・マッテオ・ガローネ 主演・マルチェロ・フォンテ、エドアルド・ベッシェ <103分・シネマスコープ>配給・キノフィルムズ
犬好きには興味のあるテーマだが、犬の映画ではなく、これは忠犬のように他人の言う事を信用したために、人生を狂わされて行く・・という男の、笑えないコメディ。
イタリアは、ローマやミラノ、ヴェネチアのような観光で賑わっている人気都市は別として、このナポリ郊外の街のように、いかにも凋落してしまった区域も多い。
あのフェリーニの「甘い生活」に描かれていた、あのラストシーンの怪魚の死骸を見る様に、この寂れた海辺の街も、死期を迎える老人のように動きがない。
そのビーチで<ドッグマン>という、犬の飼育介護医院をひとりで営んでいるマルチェロは気の弱い独身男で、悪友の言いなりで悪事にも加担して逮捕された。
善良だが、まさに犬のように友人の言いなりで生きて来たようなマルチェロには、ガツン、と悪事を制するような勇気はなく、ただ尻尾を巻いて生きている男。
イライラしながら見ているのも、この気弱な中年男が、まるで捨て犬のようにエサを貰い飄々と生きている姿が好感で、これはイタリア映画でよく見かけるタイプだ。
1989年にエットーレ・スコーラ監督の「BARに灯ともる頃」という作品でも、このビーチの街で生活している息子に、父親のマルチェロ・マストロヤンニが言う。
「こんな寂れた街に居ないで、ローマに来ればいい仕事がいっぱいあるのに・・」と諭すのだが、息子はこのノホホーーンとしたビーチの街から動こうとしない。
あの傑作を思い出すように、イタリア人の気質には、あまりにもシエスタをキャンティで流し込む<甘い生活>に酔っているようなレイジーな若者もいるのだ。
<アグレッシブ>という言葉の通用しない街と、そこに生きる人間にも、まるで野良犬のような人生もある・・・という感慨に惑わされるような不思議な作品。
●平凡なショートゴロなのに、野手がお手玉の間にセーフ。 ★★★☆☆
●8月23日より、ヒューマントラストシネマ渋谷などで、ロードショー