●9月20日(金)10-00 六本木<KINOフィルム試写室>
M-072『ベル・カント*とらわれのアリア』"Bel Canto" (2018) Priority Pictures / A Line Pictures / Depth of Field
監督・ポール・ワイツ 主演・ジュリアン・ムーア、渡辺 謙、加瀬 亮 <シネマスコープ・101分> 配給・キノ・フィルムズ
1996年12月16日、南米ペルーの日本大使公邸で起きた、現地ゲリラ組織MRTAのコマンド14人によって突発した襲撃事件の再現ドラマ。
不覚にも忘れてしまっていたが、翌年の4月22日までの間、何と127日間も公邸は占拠されて、当夜はナショナル・デー・レセプションで、多くの参列者がいた。
ゲリラ・グループは当時のフジモリ政権のもとで、革命派の多くの逮捕者の即時解放を要求して、パーティの各国出席者たちを拘束していたが、解放交渉は長引いた。
その政治的な背景は描かれないが、映画は当夜会場にいた多くの各国要人たちの混乱と、たまたま会場のイベントで唄う予定の歌手と、公邸に同席していた日本人が主役。
ソプラノ歌手を「めぐりあう時間たち」や「アリスのままで」などで好演していたジュリアン・ムーアが演じていて、今や国際スターの渡辺謙が彼女をガードする。
困った事に、つい先日、インドで起こった「ホテル・ムンバイ」の映画化作品を見たばかりなので、どうしても似たようなハイジャック設定で、イメージが混乱。
しかも、こちらのペルーの事件は、政府の対応がうまく行かずに半年もかかり、その間に日本大使館の機能は、その事件よりも多くの人質の健康対応に追われがち。
いきなり数百人の人質を大使館内に抱えて、その食料やベッド対応、それに病人も出て来るという現実に、おそらく当時も動揺の混乱は、これ以上だったろう。
その緊迫した空気を和らげようと、ゲストのオペラ歌手ジュリアンが唄い、そのサポートで渡辺謙が奔走するのはいいが、どうも作品にはサスペンスが薄いのだ。
これは、実際の交渉が長引いたことと、ゲリラ側と人質との交流の温度を描くのに時間がかかり、あのムンバイの事件のような歯切れの良さは見られずにタイクツ。
■レフトが返球をもたつく間にセカンド狙いアウト。 ★★☆☆
●11月15日より、全国ロードショー