細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●「甘い人生」の激辛ノワール

2005年03月31日 | Weblog
●3月31日(木)13-30 有楽町・朝日ホール試写
M-045 「甘い人生」a Bittersweet Life (2005) 韓国
監督・キム・ジウン 主演・イ・ビョンホン ★★★★
フレンチ・ノワールを意識したというハードボイルドなアウトローの「甘い人生」。
まるで「キル・ビル」の青年版復讐バイオレンス。
「インファナル・アフェア』シリーズのテンションを維持しながら、ストイックな美学に徹した傑作だ。クールでダンディーなイ・ビョンホンがキレると発作的の凶暴になるのは、悪党パーカー・シリーズの、とくに「ポイント・ブランク」の爆発を思わせる。あくまで「サムライ」のような内向型男性のプラトニック・ラブが地獄に堕ちるが、これって女性には通用するのかしら。破滅の美学は男だけの秘めたるロマンのような気がするけど。
ともかく、気合いの入ったバイオレンス美学は痛快だった。

●「レジェンド・三蔵法師の秘宝」のB級珍味

2005年03月30日 | Weblog
●3月30日(水)13-00 <メディア・ボックス試写室>
M-044 「レジェンド/三蔵法師の秘宝」The Touch (2003) 中国
監督・ピーター・パウ 主演・ミシェル・ヨー ★★★☆
「インディー・ジョーンズ」と「ロマンシング・ストーン」をミックスした宝探しアドヴェンチャーだが、いかにもB級の作りで、ラストはゲーム・パソコンの展開となる。もともと超ハイ・テンションのカンフー・アクション映画なので、コミック活劇だと思って見るべきで、それ以上を期待するのは無駄だろう。ただ現代の北京、敦煌、チベットへのロケーションが見られるのは、意外に観光として楽しめた。

●雨の日の「OK牧場の決闘」

2005年03月28日 | Weblog
●3月28日(月)14-55 NHK-BS-2
「OK牧場の決闘』Gunfightat OK Corral (1956) 米 
監督・ジョン・スタージェス 主演・バート・ランカスター ★★★★
ワイアット・アープに関しては、いろいろな映画や文献で紹介されている。
雨の日に試写に出かけるのも面倒なので、BSで久しぶりの西部劇を見ることにした。
先日も、逢坂剛さんから新著「墓石の伝説」を送って頂いたので、OK牧場の決闘を再確認する意味でまた見たが、この56年版は、家族の決闘よりも、ワイアットとドク・ホリデイとの友情がメインに描かれていて、ジョン・フォードの「荒野の決闘」とはかなり異なることが判った。つまり、ワイアット・アープとクラントン一家との対決に、なぜ関係のないドク・ホリデイが命がけで加担したのかが、この作品では描かれている。
「あんな連中のために命を捨てる価値があるの?」と詰問する情婦ケイトに、「友情以上の理由があるかね」という意味のことを吐くドク・ホリデイに同感した。
そろそろ、DVDを発売してくださいな。

●「大いなる休暇」と山野辺 進 絵画展

2005年03月25日 | Weblog
●3月25日(金)13-00 <メディア・ボックス試写室>
M-043 「大いなる休暇」La Grande Seduction (2004)カナダ
監督・ジャン=フランソワ・ブリオ 主演・レイモン・ブシャール ★★★☆☆
カナダ、ケベック州サントマリ島の人口は160人。主に漁業で生活していたのに海流の変化で魚が獲れなくなった。高齢者が多いので生活保護を受けたり年金で生活している人が多い。仕事がないので工場の誘致を申請したが、医者がいないという理由で却下されたので、島民は島に医師を住ませる作戦にでる。
そして島民を巻き込んだウソだらけの誘致戦争がはじまる。のんびりした島が、この事件で大騒ぎになる顛末を、フランス映画のタッチでコミックに描くのだが、この手のスロー・ライフ奨励コメディは「夢に生きる男/ローカル・ヒーロー」のような傑作が多いので新鮮味がない。これだけ元気な島民が結束したら、もっといいアイデアがあるだろう。
都会のストレスを逃れても、島には島の生活苦がある。その皮肉が妙に残った。

●「山野辺 進 絵画展」3月25日-30日まで.有楽町・朝日ギャラリー
「マルタの鷹」「荒野の決闘」「ローマの休日」などの、50年代から70年代辺りまでの思い出の映画のシーンを、懐かしい選択で鮮明に描いた絵画展。看板の絵ではなくて、作家のアート感覚でレイアウトされたスケールの大きな個展として、映画ファンは必見だろう。有楽町マリオンの最上階なのもおしゃれだ。

●「ヴェラ・ドレイク」の善意の犯罪

2005年03月24日 | Weblog
●3月24日(木)13-00 <メディア・ボックス試写室>
M-042 「ヴェラ・ドレイク」Vera Drake (2004)英
監督・マイク・リー 主演・イメルダ・スタウントン ★★★☆☆☆
1950年のロンドン。戦後の貧しい時代。不覚にも妊娠した若い女性の堕胎手術を、親切な好意で引き受けていたヴェラが逮捕された。幸せな家庭が一転するが、この映画は犯罪映画でもないし、裁判映画でもない。家庭の幸福を死守しようとするヴェラの善意と愛情が作品のテーマになっているので、見ていると天使の犯罪に見える。
この主演でイメルダはオスカーにノミネートされたし、監督賞にもノミネートされたマイク・リーの演出も素晴らしい。ただ50年代の再現に固執したせいか、映画が50年代のリズムになってしまった。
ヒッチコックの「間違えられた男」を思わせるが、同時に「マダムと泥棒」の世界も思い出した。
古風だが堅実で、実直な善意に満ちた佳作だ。

●「オープン・ウォーター」天国の地獄

2005年03月23日 | Weblog
●3月23日(水)13-00 <スペース・FS汐留ホール>
M-041 「オープン・ウォーター」Open Water (2004) 米
監督・クリス・ケンティス 主演・ブランチャード・ライアン ★★★
海洋アドヴェンチャーかと思って見たら大間違い。
これは実際に起こったダイヴァーの悲劇を、ドキュメンタリーに再現したノン・エンターテイメント。
仕事の合間の休暇で、海に潜った恋人たちが広い海洋に取り残された恐怖をリアルに再現したのはいいが、一方的な悲劇なので、コメントのしようがない。ノート・パソコンまでリゾートに持ち込む仕事人間なのに、どうして危機を予想して万一の連絡手段を用意して海に出なかったのか。すべてに不運が重なった悲劇に、お気の毒としか言いようがないが、もう少しでも娯楽的な快感が欲しかった。これは明らかに人災であって、ジョーズのせいではない。

●「リチャード・ニクソン暗殺を企てた男」とひとりのサラリーマンの死

2005年03月22日 | Weblog
●3月22日(火)13-00 <東芝試写室>
M-040 「リチャード・ニクソン暗殺を企てた男」The Assassination of Richard Nixon (2004)米
監督・ニルス・ミュラー 主演・ショーン・ペン ★★★★
特に政治的な反動テロリストの暗殺未遂事件ではなく、アメリカン・ドリームの厚みに潰されたひとりの小心なサラリーマンの転落を描いている。地味だが知的なフィルム・ワークに好感が持てる。実際にあった事件をもとにデカプリオやアレキサンダー・ペイン監督たちが出資して映画化が実現したという、質素だがパワーのあるサスペンス。とくに実直な男が家庭や仕事に失敗して、人生崩壊するプロセスが、ショーン・ペンの柔軟な名演で悲壮感が光る。
乾いたカメラ・ワークも、低迷した60年代のアメリカを空虚な美しさで再現して見せる。傑作だ。

●ライフ・アクエリアス」とイエロー・サブマリン

2005年03月18日 | Weblog
●3月18日(金)13-00 <ブエナ・ビスタ試写室>
M-039 「ライフ・アクアティック」The Life Aquatic (2004)米
監督・ウェス・アンダーソン 主演・ビル・マーレイ ★★★☆☆
親友を<ジャガー鮫>という深海怪魚の牙で失ったチーム・ズィスーの海底探検隊のリーダー・ビル・マーレイは、最後の探検に賭けるが、資金は海賊に奪われ、記録映画も不評で妻との折り合いも険悪ムード。いいところない。そこで先妻の子どもと名乗る青年を引き連れて最後のリベンジに海に出る。というストーリーは「海底二万哩」よりもドラマティックだが、あの「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」の奇才監督だから、相当にオカシなヴィジュアルが展開する。
ま、おとなの漫画のような不思議なコメディだ。これだけのオール・スターが集まるところが、このプロジェクトの魅力だろう。

●「最後の恋のはじめ方」のニュー・タッチ

2005年03月18日 | Weblog
●3月17日(木)13-00 <ソニー・ピクチャーズ試写室>
M-038 「最後の恋のはじめ方」HITCH (2005) 米
監督・アンディ・テナント 主演・ウィル・スミス ★★★☆☆☆
久しぶりに楽しいロマンティック・コメディの快作だ。
ウィル・スミスとしても初めてのキャラだが、「バッド・ボーイ」がスーツを着てニューヨークを闊歩しているようなスピード感が爽やかだ。もともと自分の失恋がきっかけで恋愛コンサルタントを開業して「恋の手ほどき」をするというキューピッド役でのいろいろなアプローチ方法を実演して見せるのが笑わせる。ニューヨーク・ロケもおしゃれなスポットを満載して、まるで観光PR映画だ。他人のフンドシで相撲しながら、しだいに自分の恋にも自信をつけていくシナリオも良く、おバカな演出を避けた監督のセンスは上等だった。