細越麟太郎 MOVIE DIARY

最新の映画情報や批評を掲載します。

●「おわらない物語/アビバの場合」のおかしな視点

2005年03月17日 | Weblog
●3月16日(水)13-00 <映画美学校第一試写室>
M-037 「おわらない物語/アビバの場合」Palindromes (2004) 米
監督・トッド・ソロンズ 主演・エレン・バーキン ★★★☆☆
いかにもトッド・ソロンズ的語り口による、シニカルでニヒルなアメリカン・コメディだ。12才の少女アビバが虐待を受けた後の心の旅路が、8人の女優で展開するという前代未聞の構成。人間のもつ様々なコンプレックスを独特のユーモラスな視点で描くユニークな映像世界は大胆で面白いが、あの「ハピネス」のショックからは和らいだ映画。
コミック・タッチの風変わりで少々グロテスクな人間愛を楽しみたい方はどうぞ。

「インファナル・アフェア・3/終極無間」有終の美学

2005年03月15日 | Weblog
●3月15日(火)13-00 <アスミック・エース試写室>
M-036「インファナル・アフェア・3/終極無間」Infarnal Affairs 3 (2003)中国
監督・アンドリュー・ラウ 主演・トニー・レオン ★★★★☆
三部作のテンションが持続した最終篇。同じ香港警察を描いたジャッキー・チェンの新作とは、まったく別の国の映画のようにネオ・ノワールの気負いに満ちている。ストーリーを年代で前後させて進行するのでジグソー・パズルの様相が多少困惑させられるが、これがこのシリーズの個性。この謎掛け進行についていくのが評価の分かれ目になる。
警察学校の同期生が巨大悪徳組織の壊滅のために囮捜査官として数人送り込まれたが、長期の捜査でいろいろ誤認が生じてくる。友情の宿命的対決という古典的なパターンでなく、クールでダンディな映像美に徹したサスペンスは一級で、マーティン・スコセージ監督がデカプリオでリメイクするという気持ちはよく判る。かっこつけすぎという意見は、この際ニヒルに無視したほうがいい。

●『ハイド・アンド・シーク/暗闇のかくれんぼ」の鬼サン

2005年03月14日 | Weblog
●M-035  3月14日(月)13-00  <FOX試写室>
「ハイド・アンド・シーク/暗闇のかくれんぼ」Hide and Sheek(2005)米
監督・ジョン・ポルソン 主演・ロバート・デ・ニーロ ★★★
デ・ニーロの新作スリラーはダコタ・ファニングと共演。自殺した母の事件がトラウマになって自閉症気味の娘の転地療法のために、心理学者の父親デ・ニーロはニューヨーク郊外の一軒家に娘とふたりで引っ越す。しかし近所の住人は異常者が多く、娘ダコタの心理状態にも異常さが目だつようになる。怖い。こわい。コワい。
これは家の悪霊がふたりを悩ますホラーかと思っていたら、どうも母親の霊に問題がありそうだ。と、途中までは面白い展開。そうか、娘がエキソシスト状態になるのか、と思ったらそうでもない。
これ以上は映画評論家としてはストーリーを明かす訳にはいかないが、デ・ニーロが心理学者にしてはおかしな部分が目立つようになって、結局、ラストには納得が行きかねる。あの絵は誰が描いていたのだろう。変なスリラーだ。

●「フライト・オブ・フェニックス」の難飛行

2005年03月11日 | Weblog
●M-034 3月11日(金)13-00 <FOX試写室> 監督・ジョン・ムーア 主演・デニス・クエイド ★★★☆☆
1965年のジェームズ・スチュワート主演「飛べ!フェニックス」のリメイクだ。オリジナル作品の監督ロバート・アルドリッチは「ヴェラ・クルズ」などの男性映画のベテラン。その息子がこの作品のプロデュースをしているので、ハードボイルドなタッチはDNAで受け継いでいる。かなり強引なドラマだが、60年代のクラシックなタッチで押し切るので、あまりリアルな見方をしなければ、痛快なサクセス・ムービーになっている。墜落シーンなどはCG処理で迫力はあるが、どうしてこの古典的なストーリーを今リメイクしたのかはワカラナイ。たたスティーブ・ウィンウッドなどの60年代ロックで押し切ったのは納得。どこか懐かしいハリウッド活動写真だ。

●『プライド」の映画的プライドと駅前留学

2005年03月09日 | Weblog
M-032 3月9日(水)13-00
●「プライド/栄光への絆」Friday Night Lights (2004)米
監督・ピーター・バーグ 主演・ビリー・ボブ・ソーントン ★★★★
テキサスのハイ・スクールのアメフト・スポコン映画だから、「タイタンを忘れない」のレベルかと思って見たら、さすが「8 Mile 」のブライアン・グレイザーのプロデュースだから新鮮で感動的なパワーに溢れている。ダメ・チームが勝ち進むというパターンでなく、勝敗はさておき、この瞬間が青春で生涯に二度とない時間。だからチーム・メイトを信じて友情に賭けろ、というコンセプトがさわやかだ。ビリー・ボブは実直なコーチだが、ルーカス・ブラックとジェイ・ヘルナンデスの若手がいい味を出していた。男だなー、という快感の感動作だ。

M-033 3月9日 (水)15-30 <松竹試写室>
●「英語完全征服」English Complete Conquest (2003)韓国
監督・キム・ソンス 主演・チャン・ヒョウ ★★★☆☆☆
韓国でも英語コンプレックスはあるらしく、駅前留学でクラスメイトになったカップルが例によってドタバタな恋の行方が面白い。時々漫画チックな脱線はあるものの、ラストではキッチリ感動のハッピー・エンド。「MUSA/武士」の監督だけに「アリー・My Love」のような女性優位での展開を、いかにも好調なコリアン・コメディのアベレージの高さを証明した。せめて日本のおバカ・喜劇もこの程度までがんばってくださいな。

●クリント・イーストウッドのベスト

2005年03月08日 | Weblog
●3月8日(火)Warner Bros. DVD
「アウト・オブ・シャドー」Out of Shadow (2000) 90分
監督・ブルース・リッカー 主演・クリント・イーストウッド ★★★★
今回のクリント・イーストウッドのアカデミー監督賞、作品賞受賞の快挙は、ほとんどの予想を裏切った。まだ「ミリオンダラー・ベイビー」を見ていないが、どうして受賞を見抜けなかったのだろう。その疑問を解くつもりで、また「アウト・オブ・シャドー」を見た。クリントの生誕から「スペース・カウボーイ」までの映画人生をスクラップしたドキュメントだが、ドン・シーゲルとセルジオ・レオーネを師としてスタートした、クリントの映画作りの秘密がここに浮き上がってくる。ジョン・ウェインのコメントやメリル・ストリープの言葉の影にイーストウッド映画の骨太さが見えてくる。本人は「アウトロー」を自己ベストと信じている真情がよく判る。レイ・チャールズとの「ピアノ・ブルース」でのジャズ談義。「年をとると無茶をするのが平気になった」と話すクリントは、無敵の巨匠だろう。モーガン・フリーマンのナレーションが絶品だ。

●『イン・ザ・プール」の精神症状

2005年03月07日 | Weblog
●3月7日(月)13-00<ヘラルド試写室>
「イン・ザ・プール」In The Pool(2004) 日・IMJ
監督・三木 聡 主演・松尾スズキ ★★☆☆
精神科医師で名前が「イラブ・イチロー」となると、メジャー・リーグ大好き人としては見てみたくなる。しかしせっかくシュリンクの話なのにウディ・アレンほどの捻りもなく、だいいち、誰が主人公なのやら・・。トホホなコメディならテレビのバラエティ番組でウンザリしている。テレビでなく映画なのだというレベルで、この作品は今年の日本映画の印象に残るのだろうか。このレベルの症状の精神症では病気とは言えないようだ。そして今こそ深刻な精神障害のテーマであれば、おかしさと哀しみと虚しさが見たかった。残念だ。

「サラ・いつわりの祈り」の真実

2005年03月03日 | Weblog
3月3日(木)13-00 <東芝試写室>
●M-030 「サラ/いつわりの祈り」The Heart is Deceitful Above All Things (2004)米
監督・主演/アーシア・アルジェント ★★★☆☆
JT・リロイの自伝小説の映画化で、あの「サスペリア」のダリオ・アルジェントの娘さんの監督・主演なので、インディペンデントらしい実験的な映像創作は随所に見られる。母と少年の貧困による数奇な運命は、アメリカ映画の裏側の貧しさと異臭と狂気を見せる。クリエイティブな視点では面白いパンク・ロック・ムービーだが、娯楽映画ではないので見ていて映画的な快感はない。疲れている時には拒絶反応があるが、これも映画試作の苦しみだ。赤いカラス。黒い雲。そして果てしない苦悩。どうして人生はこうも悲惨なのでしょうね。

「コンスタンティン」って何者だ。

2005年03月02日 | Weblog
3月2日(水)13-00<ワーナー試写室>
●M-029「コンスタンティン」Constantine (2005)米
監督・フランシス・ローレンス 主演・キアヌ・リーヴス ★★★
とにかくキアヌの新シリーズというので試写に駆けつけた。どんなタイプの作品かは試写状では予測できない。詳しくは映画評論家のルールで言えないが、新解釈のエキソシストものだ。キアヌは末期ガンの魔除け専門家。それが命を賭けて悪霊たちと対決する。ま、印象としてはスティーブン・キングの「ドリーム・キャッチャー」みたいだが、ハリウッドがどうして、こうして悪魔退治をしたいのか、そちらの方が興味ある。あの「ディアボロス」のように、どうしてこうも悪霊が徘徊するのだろう。お好きな方はどうぞ。

2月のベスト・3&ワースト・ムービー

2005年03月01日 | Weblog
2月の試写・ベスト・3
●「海を飛ぶ夢」The Sea Inside (2004)スペイン
監督・アレハンドロ・アメナーバル 主演・バビエル・バルデム ★★★★☆☆
当然の本年度アカデミー外国語映画賞受賞。ことしのベスト・フィルムの一本に違いない。

●「ウィスキー」Whisky (2004)ウルグァイ
監督・ファン・パブロ・レベージャ 主演・アンドレス・パソス ★★★★☆
何と言う寡黙で雄弁なヒューマン・ドラマ。サイレント映画のようなムービーの原点に接する感動。

●「ロング・エンゲージメント」The Very Long Engagement (2004)フランス
監督・ジャン=ピエール・ジュネ 主演・オドレイ・トト ★★★★
ユニークな映像美とユーモラスな語りはジャック・タチを連想する「かくも長き不在」21世紀版。

□ワースト
◎「Shall We ダンス?」 Shall We Dance ? (2004)米
監督・ピーター・チェルソム 主演・リチャード・ギア ★★☆☆
オリジナルをリメイクするのに苦労したのは、明らかなミス・キャストのせいだろう。意外性ゼロの凡作。

★ベスト・DVD
「風と共に散る」Written on the Wind (1956)米
監督・ダグラス・サーク 主演・ローレン・バコール ★★★★
アメリカン・ドリームの崩壊メロドラマとして、いま見るとハリウッド・スタジオ・ムービーの美学を感じる。